RVR(滑走路視距離)とは——METARとATISでの「報じられ方」を読み解く

RVR(滑走路視距離)とは——METARとATISでの「報じられ方」を読み解く

霧の朝、滑走路の端に立って前を見る。滑走路灯がいくつ見えるか——その「見える距離」を数値にしたものが**RVR(Runway Visual Range/滑走路視距離)**だ。低視程での離着陸ができるかどうかは、多くの場合この一つの数字で決まる。

RVRは概念そのものより、**METARやATISでの「表記・報じられ方」**でつまずく人が多い。R28/0600U とは何か、MPV、末尾の FT は何を意味するのか。この記事では、RVRの基礎をおさえたうえで、実際の電文・放送でどう出てくるかを具体例で読み解いていく。

RVRとは何か——地上視程と何が違う #

RVRは、滑走路中心線上にいるパイロットが、滑走路の表示・灯火・輪郭をどこまでの距離で視認できるかを表す値だ。似た言葉に「地上視程(prevailing visibility)」があるが、両者は性格が違う。

  • 地上視程:空港全体を見渡した、一般的・広域的な「見通し」。人(測候)や視程計で観測。
  • RVR:特定の滑走路の、しかも接地帯付近というピンポイントの視距離。滑走路灯の光度も加味される。

離着陸で本当に効くのは「その滑走路がどこまで見えるか」だ。だから計器進入の着陸最低気象条件は、原則RVRで規定される。日本でも2006年秋以降、計器進入の最低気象条件は(サークリング進入などを除き)地上視程ではなくRVRで段階的に設定されるようになった。RVRが出ている滑走路では、地上視程よりRVRが優先される、と覚えておけばいい。

どうやって測るのか #

現在の主流は前方散乱計(forward scatter)、空港によっては従来型の**透過率計(transmissometer)**を使い、大気の透明度からRVRを算出する。

  • 精密進入用の滑走路では、装置は接地帯(touchdown zone)脇に設置される。
  • 高いカテゴリーの運用では、接地帯・中間・停止端の3か所に置き、滑走路の長さ方向の視距離ばらつきを把握する。
  • 滑走路灯の光度設定によっても見える距離は変わるため、RVRの算出にはその時の灯火光度が反映される。

報告できる値には上限・下限がある。国際的には最大2,000m(または6,500ft)までで、それ以上は「2,000m超」としてしか出さない。ここが後述の P(above)につながる。

METARでの報じられ方——ここが本題 #

METAR/SPECIでは、視程グループの直後にRVRグループが入る。基本形はこうだ。

R28/0600
│  │ └─ 接地帯RVR(メートル)
│  └─── 滑走路28
└────── RVRを表す "R"

読み方は「滑走路28のRVRは600メートル」。ここに、状況に応じて次の要素が足されていく。

① 平行滑走路の識別:L / C / R #

同じ番号の平行滑走路があれば、R28L(左)・R28C(中)・R28R(右)で区別する。

R28L/0600

② 変化傾向:U / D / N(末尾) #

直近10分間でRVRが上昇傾向か下降傾向かを、値の後ろに付ける。

  • U(Up)=上昇傾向(視程が良くなっている)
  • D(Down)=下降傾向(悪くなっている)
  • N(No change)=はっきりした傾向なし
R28/0600U   → 滑走路28のRVRは600m、上昇傾向
R28/0600D   → 600m、悪化傾向(要注意)

同じ600mでも、UD かで意味合いはまるで違う。下降傾向の D は「今まさに詰まってきている」サインだ。

③ 変動:V(レンジ表示) #

10分間でRVRが大きく変動した場合は、最小値V最大値で幅を示す。

R28/0550V0800   → 滑走路28のRVRは550〜800mの間で変動

④ 測定限界:M / P #

装置が測れる範囲の外に出たときは、値の頭に接頭辞を付ける。

  • M(Minus)=測定下限を下回る。例 R28/M0050 =「50m未満」
  • P(Plus)=測定上限を上回る。例 R28/P2000 =「2000m超」

M0050(50m未満)は、CAT III級の極端な低視程でしか見ないような値だ。

⑤ 単位:メートルかフィートか #

ここが国・地域でいちばん混乱するポイント。

  • ICAO方式(日本・欧州など)メートル。単位表記なし。例 R28/0600
  • アメリカ方式百フィート単位+末尾に FT。例 R06L/2000FT(=2000フィート)。US式は変動も R06L/2000V4000FT のように FT が付く。

つまり、末尾に FT があればフィート、なければメートル。日本の空港のMETARは基本メートルなので、数字をそのままメートルで読めばよい。

まとめて読む #

要素を全部盛りした例:

R24L/0550V0800D

→「滑走路24Lの接地帯RVRは、10分間で550〜800mの間を変動し、傾向は下降」。数字だけでなく、V の幅と D の向きまで読めて、はじめてRVRを「読んだ」と言える。

ATIS/管制での報じられ方 #

RVRは電文(METAR)だけでなく、ATISや管制官の音声でもリアルタイムに伝えられる。低視程時にこそ効いてくる情報だ。

  • ATIS:視程が悪化してRVRが観測される状況になると、ATISの気象情報にRVRが含まれる。読み上げは概ね「アールブイアール ランウェイ34L 600メートル(RVR runway 34L 600 meters)」のように、滑走路を明示して値を読む形。複数滑走路や接地帯/停止端で別々に出ることもある。
  • 管制官からの通報:さらに視程が変化する局面では、管制官が進入・着陸機に対して最新RVRを口頭で伝える。「RVR touchdown 550, midpoint 600, rollout 700」のように3点の値を続けて言うこともある。
  • デジタルATIS(D-ATIS):音声に加え、データリンクで文字としてコックピットに届く。低視程運用では、聞き違いのない文字情報の価値が高い。→ 詳しくはD-ATISの記事で。

実務では、「ATISで大枠のRVRをつかみ、進入直前に管制官の最新値で最終判断する」という二段構えになる。RVRは分刻みで動く数字だからだ。

なぜRVRがそこまで重要なのか——CATとの関係 #

計器進入は、着陸最低気象条件(主にRVRと決心高)によってCAT I / II / IIIに区分される。ざっくり言えば、

  • CAT I:RVRおおむね550m以上
  • CAT II:RVRおおむね300m程度まで
  • CAT III:さらに低く、CAT IIIbでは50m級、IIIcでは0(理論上)まで

カテゴリーが上がるほど、地上設備(高精度ILS、灯火)・機上装置(オートランド等)・乗員資格の要件が厳しくなる。そのすべての判断の入口にあるのが、**「いまRVRがいくつか」**という一点だ。だからこそ、06000600D と読み違えないこと——値だけでなく傾向まで正しく読むことが、実務では効いてくる。

まとめ #

  • RVR=特定滑走路の接地帯付近で、灯火・表示をどこまで視認できるかの距離。地上視程より優先され、計器進入の最低気象条件の基準になる。
  • 測定は前方散乱計/透過率計。精密進入では接地帯脇、高カテゴリーでは3点。報告上限は2,000m(6,500ft)。
  • METARの読み方R+滑走路+/+値。L/C/Rで平行滑走路、末尾U/D/Nで傾向、Vで変動、頭のM/Pで測定限界、末尾FTならフィート(無ければメートル)。
  • ATIS/管制では滑走路を明示して音声で読み上げ。D-ATISなら文字でも届く。進入直前は管制官の最新値で最終判断。
  • すべてはCAT I/II/IIIの入口。数字と記号を正確に読むことが、低視程運用の第一歩だ。

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出典

画像出典:Wikimedia Commons “JetBlue A321neo landing in the fog over Runway 22L lights at Boston” by 4300streetcar(CC BY 4.0)

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