SCW(SUPERC WEATHER)の使い方——プロが使う天気予報ビジュアライザを徹底解説
ヘッダー画像:台風 Hagibis(2019年10月9日、Suomi NPP衛星)。出典:Wikimedia Commons /パブリックドメイン(NASA/NOAA)。
「SCW(SUPERC WEATHER)」というサイトをご存じでしょうか。supercweather.com で運営されている、気象庁のスーパーコンピュータが計算した数値予報データを、ビジュアルで見られるサイトです。
一般の天気予報アプリよりは情報量が多く、Windyよりは日本の気象庁モデルに特化している—— そんなプロ・専門家向けのポジションを占めるサービス。
この記事では、
- SCWとは何か
- 3つのモデル(LFM / MSM / GSM)の違い
- 使い方の基本
- パイロットとしての活用法
- 他サービス(Windy、ナウキャスト、アメダス)との比較
を整理します。
① SCWとは #
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | SCW(SUPERC WEATHER/スーパーコンピュータ気象) |
| URL | https://supercweather.com/ |
| リリース | 2017年6月(GPV気象予報の後継) |
| データ源 | 気象庁(JMA:LFM/MSM/GSM)/NOAA(GFS)/ECMWF(一部) |
| 無料/有料 | 基本無料、有料会員(プロ向け)あり |
SCWは「気象を計算するサイト」ではなく、「気象庁等が計算した結果を、見やすく可視化するサイト」。
Windyに似た位置づけですが、SCWは 日本の気象庁モデル(LFM/MSM/GSM)が中心になっている点が大きな違いです。
② 3つの予報モデル——「広域」「詳細」「局地」 #
SCWで切り替えられるモデルは大きく3つ。この使い分けがすべての基本です。
広域モデル(GSM:Global Spectral Model) #
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解像度 | 20km メッシュ |
| 予測時間 | 11日(264時間)先まで |
| 更新頻度 | 1日1回 |
| 用途 | 中長期予報 |
「1週間後の旅行の天気どうかな?」レベルの判断に向く。
詳細モデル(MSM:Meso-Scale Model) #
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解像度 | 5km メッシュ |
| 予測時間 | 39時間先まで |
| 更新頻度 | 1日8回(3時間ごと) |
| 用途 | 日々の運航計画 |
パイロットが前日〜当日朝に最終チェックするレイヤー。
局地モデル(LFM:Local Forecast Model) #
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解像度 | 2km メッシュ |
| 予測時間 | 約10時間先まで |
| 更新頻度 | 1時間ごと |
| 用途 | 当日の短時間判断 |
山岳・谷間・海岸線などの局地気象を捉えられる。HRRR(米国)のような短期高解像度モデルに相当。
3モデルの使い分け早見表 #
| シナリオ | 使うモデル |
|---|---|
| 1週間〜10日先の予測 | 広域(GSM) |
| 翌日の運航計画 | 詳細(MSM) |
| 当日の運航判断 | 局地(LFM) |
→ 関連記事:Windyの「Forecast Model」を使い分けよう
③ SCWで見られる項目 #
各モデルで、以下の気象要素を色付きマップで可視化できます:
- 気温(地上・各高度)
- 湿度(地上・各高度)
- 気圧(地上)
- 風向・風速(地上・各高度)
- 降水量(各時間積算)
- 雲量(上層・中層・下層)
- 雷の発生確率
- 波浪(波高・波向・周期)
- 衛星雲画像(観測ベース)
特に注目すべき機能:
1時間ごとの「再生」 #
タイムラインを動かして、未来の予報を時系列で再生できる。「いまから3時間後に雨雲が到達する」という動きが視覚的に分かります。
鉛直プロファイル #
任意の地点をクリックすると、地上から上空までの気温・風・湿度のプロファイルが表示される(スカイューT風)。
- 着氷高度(0℃の高度)
- 逆転層の有無
- シーリング推定
——が一目で分かります。
波浪予報 #
海上飛行・洋上ヘリ運航にとって貴重。波高・波向・周期が4時間ごとに更新されます。
④ SCWの使い方——基本の流れ #
ステップ1:トップページにアクセス #
https://supercweather.com/ にアクセス。
ステップ2:モデルを選ぶ #
画面上部または右下にある 「広域 / 詳細 / 局地」 の切替を選択。
- 中長期 → 広域(GSM)
- 翌日 → 詳細(MSM)
- 当日 → 局地(LFM)
ステップ3:表示項目を選ぶ #
「雲・降水」「気温」「気圧・風」「衛星画像」「波浪」など、画面上のタブで切り替え。
ステップ4:地点を確認 #
- 地図上で目的地・出発地・経路の予報を確認
- 必要に応じてズーム
- タイムラインを動かして未来の変化を見る
ステップ5:必要に応じて鉛直プロファイル #
任意の地点をクリック → 上空までの気象プロファイルを確認。
⑤ 無料/有料の違い #
SCWは基本機能はすべて無料で使えます。
有料会員(プレミアム)になると:
- 広告非表示
- より長期間の予報アーカイブ
- 専門的な解析データの追加表示
- 一部のモデルでの高頻度更新
一般のパイロット・登山者・写真家・学生レベルなら、無料機能で十分です。
⑥ パイロット視点での活用法 #
1. 経路全体の風予測 #
地上10m・925hPa・850hPaなどの高度別風予測を見て、
- 追い風/向かい風の傾向
- 山岳の風下乱気流の発生予測
- 進入経路の風の変化
を事前にイメージできます。
→ 関連記事:R66が乱気流で空中分解(地形風下のリスク)
2. 雷雲発達の予測 #
「雷の発生確率」レイヤーで、
- 積乱雲が発達しそうな地域
- 時間帯
を確認。雷雨シーズンの運航では必須。
→ 関連記事:「春の小さな嵐」を知っておく
3. 着氷高度の確認 #
鉛直プロファイルで0℃の高度を確認。
- 自分の飛行高度が0℃以下になるか
- 雲層の上下関係
→ 関連記事:着氷(アイシング)の基礎
4. 沿岸・洋上運航の波浪予報 #
ドクターヘリ・海上保安庁・海上ヘリポート発着で重要。
5. 視程・雲量 #
MSMの雲量予測で、目的地で目視飛行可能かを予測。
→ 関連記事:「もう少しだけ」が命取り(霧の中の判断)
⑦ 他サービスとの比較・併用 #
各サービスは、役割が違うので併用するのが正解です。
| サービス | 役割 |
|---|---|
| SCW | 日本のJMAモデル中心、レイヤーが豊富、専門寄り |
| Windy | 海外モデル(ECMWF/GFS等)の比較に強い、UIが美しい |
| 高解像度降水ナウキャスト | 30分先までの降水予測、250m解像度 |
| アメダス | 実況観測、10分ごとの実測値 |
| METAR / TAF | 公式観測・予報、空港の正確な情報 |
| 下層悪天予想図(FBJP) | 公式の着氷・乱気流予報 |
推奨の使い分け順序 #
中長期計画:SCW広域(GSM)/Windy ECMWF
↓
前日:SCW詳細(MSM)/Windy GFS
↓
当日朝:SCW局地(LFM)/HRRR相当
↓
出発前:METAR / TAF + 下層悪天 + アメダス
↓
飛行中:高解像度降水ナウキャスト + アメダス + 目視
⑧ SCWの注意点 #
1. これは「数値予報」であって「天気予報」ではない #
SCWのトップにも明記されていますが:
数値予報は、天気予報を作成するための基礎資料であり、予報そのものではありません。
気象予報士が解釈・補正したものが「天気予報」。SCWの数値はそのまま信じるのではなく、参考にするもの。
2. 公式情報を最優先 #
航空運航では、METAR/TAF/各種悪天予想図が法的根拠のある気象情報です。SCWは全体傾向の把握には優れるが、運航の最終判断は公式情報で。
3. モデルの限界 #
- 局地モデル(LFM)でも、山岳の谷底・建物の風影などは正確には予測できない
- 雷の発生時刻は誤差が出やすい
- 海岸線の風の急変は捉えにくい
最終的には目視確認が安全の最後の砦です。
⑨ 学生・若手パイロットへ #
SCWは、日本の気象学習に最適なツールです。
おすすめの練習 #
- **毎日朝、SCW詳細(MSM)**を開く
- その日の雨・雲・風予測を確認
- 夕方、**実際の気象(アメダス)**と照合
- モデルが当たった/外れたを記録
3か月続けると、
- JMAモデルの精度のクセ
- 日本の地形による予報の難しさ
- 「ここは予報が外れやすい」場所のパターン
——が体感で分かるようになります。
教科書で「数値予報モデル」と覚えるより、毎日SCWを見て実況と照合するほうが、気象判断力は何倍も速く伸びます。
雑感 #
SCWは、Windyほど派手なUIではないけれど、日本の気象を本気で読むためには、Windyより優位な側面が多くあります:
- JMA本家モデル(LFM/MSM/GSM)に最適化されている
- 波浪予報が充実
- 日本の気象現象に詳しい
日本で飛ぶなら、SCWは「日々開く」ツールとして持っておくべき。 Windyは「海外モデルと比較する」ツールとして持っておくべき。
両者は補完関係にあります。「片方だけ」と決めるのではなく、両方を使って気象を立体的に読む——これが、現代のパイロットに求められる気象判断スキルです。
まとめ #
| 要点 | 内容 |
|---|---|
| SCWとは | 気象庁のスパコン数値予報を可視化する無料サイト |
| 3モデル | 広域(GSM、20km)/詳細(MSM、5km)/局地(LFM、2km) |
| 使い分け | 中長期=広域、翌日=詳細、当日=局地 |
| 強み | 日本のJMAモデル、波浪、鉛直プロファイル |
| 公式情報併用 | METAR/TAF/悪天予想図/アメダスと組み合わせる |
参考:SCW(SUPERC WEATHER)公式(https://supercweather.com/ )、気象庁 数値予報の解説、Windyとの比較レビュー記事。本記事は2026年5月時点の公開情報をもとに整理した教育用記事です。
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