対空センターとは何か——AFISとAEIS、そして「〇〇 RADIO C」の意味
以前、運航情報官が現地にいない空港について書きました。無線を入れると、現地に誰もいないのに応答がある。その声がどこから来ているのか、という話です。
今回はその声の出どころ——対空センターそのものを扱います。国土交通省が公開しているリーフレットに、業務の中身と担当空港が一覧で載っていました。
対空センターとは #
リーフレットの定義が簡潔です。
対空センターとは、飛行中の航空機に対し、運航に必要な情報を無線電話により提供する対空援助業務の実施拠点です。 全国3か所(東日本・中日本・南日本)に設置され、航空管制運航情報官が24時間体制で勤務しており、災害等においてもサービス継続可能な体制を構築しています。
運用開始は2021年10月1日。同じ日に運航拠点(FAIB:ファイブ)——東京・関西——も動き出しています。こちらは発着調整や許認可申請の窓口を一元的に行い、ヘルプデスクでオペレーターやエンドユーザーからの問い合わせに応じる組織です。
対空センターが「空に向かう窓口」、FAIBが「地上の窓口」という分け方だと理解しています。
航空保安業務のどこに位置するか #
リーフレット裏面に業務の系統図があり、対空援助業務の居場所がはっきり分かります。
航空保安業務
├─ 管制業務
├─ 運航情報業務
│ ├─ 運航援助情報業務
│ │ ├─ 対空援助業務 ── AFIS / AEIS ← ここ
│ │ ├─ 飛行場情報業務
│ │ ├─ 航空交通管理情報業務
│ │ └─ 航空情報業務
│ ├─ 運航調整
│ ├─ 運航支援等
│ ├─ 運航危機管理
│ └─ 運航監督
├─ 管制通信業務(管制通信・国際対空通信)
└─ 管制技術業務(航空灯火・電気技術/飛行検査/交通管制機械)
対空援助業務は「管制業務」の下ではなく、「運航情報業務」の下にあります。以前も書いたとおり、これは管制(指示)ではなく援助(情報提供)である——系統図の枝分かれが、そのまま性格を表しています。
担当するのは航空管制運航情報官。ほかに航空情報管理管制運航情報官、航空交通管理管制運航情報官、航空管制通信官といった職名が並びます。
AFISとAEIS——2つの業務 #
対空援助業務は、2つに分かれます。
AFIS(Aerodrome Flight Information Service) #
空港とその周辺を飛行中の航空機をサポートする 離着陸に必要な情報等を無線電話により提供します。
提供する情報
- 気象情報
- 他の航空機の情報
- 空港の状態
- 管制承認
4つ目に注目してください。AFISは援助業務ですが、管制承認(クリアランス)の伝達は行います。中身を決めるのは管制機関、伝えるのが運航情報官、という役割分担です。
AEIS(Area / En-route Information Service) #
飛行中の航空機の航行をサポートする 航行に必要な情報等を無線電話により提供します。 航空機からの位置報告等を運航者等へ中継することも可能です。
提供する情報
- 気象情報
- 航空保安施設等の運用に関する情報
- VFR機の位置報告
- PIREP(気象等のパイロットリポート)
- 民間訓練試験空域の情報
AEISのほうが、VFRで飛ぶ側には身近です。位置報告を受けてくれる、他機のPIREPが手に入る、訓練試験空域の状況が聞ける、そして社への中継までしてくれる。
AFISは「その空港のこと」、AEISは「飛んでいる途中のこと」。この切り分けで覚えるのが早いと思います。
業務提供時間——ここにヘリの話がある #
業務提供時間は各空港の運用時間に準じますが、急患搬送機に対する情報提供等、運用時間外においても柔軟に対応が可能です。 ※臨時延長・臨時提供をご要望の際は業務提供機関までご連絡ください。
「急患搬送機に対する情報提供等」。公式リーフレットに、この一行が入っています。
以前まとめたAIMOSの記事でも、気象庁の資料に「夜間の緊急搬送ヘリ運航等のための航空気象業務臨時提供」という規定を見つけました。気象も、対空援助も、時間外に人を運ぶための仕組みを持っている。
そして両方に共通して書かれているのが、事前に連絡してくださいということです。枠はある。使うには言う必要がある。
なお、リーフレットには各対空センターの電話番号とメールアドレスが公開されていて、「ご不明点・お問い合せについても24時間お待ちしております」とあります。
誰が、どこで提供しているか #
AFISの提供機関は4区分に分かれます(以下は2022年10月版リーフレット時点)。
① 対空センターにおける提供
| 提供機関 | 空港 |
|---|---|
| 新千歳対空センター | 利尻、紋別、中標津、奥尻、大館能代、庄内、松本、新島、神津島、三宅島、八丈島 |
| 大阪対空センター | 能登、隠岐、福井、鳥取、但馬、石見 |
(リーフレットには「2023年4月には大島空港も集約」との予告も入っています。)
② FSCにおける提供
| 提供機関 | 空港 |
|---|---|
| 福岡FSC | 対馬、壱岐、福江 |
| 鹿児島FSC | 種子島、屋久島、喜界、徳之島、沖永良部、与論、奄美 |
| 那覇FSC | 久米島、北大東、南大東、多良間、与那国 |
③ 現地空港における提供(空港事務所・出張所)
稚内、花巻、山形、福島、静岡、大島、南紀白浜、出雲、山口宇部、佐賀
④ 一部時間帯の提供
仙台(新千歳対空センター)、北九州・佐賀・長崎・大村(福岡FSC)、下地島(那覇FSC)
AEISの提供サイトも一覧になっています(括弧内は子局)。
| 提供機関 | サイト |
|---|---|
| 新千歳対空センター | 釧路、帯広、丘珠、横津岳、旭川、秋田、上品山(福島北部A・福島北部B・いわき)、新潟、大子、所沢(上信)、成田、松本(長野)、箱根(甲斐) |
| 大阪対空センター | 小松(琵琶湖北部)、三河、三国山(瀬戸内)、串本、美保 |
| 福岡FSC | 岩国、清水、三郡山、福江 |
| 鹿児島FSC | 加世田、奄美 |
| 那覇FSC(※現在は福岡へ統合) | 八重岳、宮古 |
※ 那覇AEISは福岡AEISに統合されました(AIM-J 2026年後期版)。上表はリーフレット(2022年10月版)時点のもので、八重岳・宮古の担当は福岡側に移っています。
山の上の名前が並んでいるのが、AEISの性格を物語っています。横津岳、上品山、三国山、三郡山、八重岳——広く電波を飛ばすために、高いところに置く。地名だけ見れば、どこをカバーしたいのかが見えてきます。
「〇〇 RADIO C」——バックアップの仕組み #
リーフレットで、いちばん面白いと思ったのがここです。
◆対空センター被災等の場合、他の対空センターでのバックアップ運用による情報提供に切替え、継続してAFISサービスを提供します。 ◆空港における被災、機器障害、不測の事態等の場合、対空センターでのバックアップ運用による情報提供に切替え、継続してAFISサービスを提供します。 ◆バックアップ運用中は、無線呼出符号「〇〇 RADIO」の後にバックアップ通信所を示す識別の付加が必要となります。
コールサインに、一文字足される。
| 末尾の文字 | バックアップ元 |
|---|---|
| C | 新千歳 |
| O | 大阪 |
| K | 鹿児島 |
| F | 福岡 |
| N | 那覇 |
具体例を挙げると——
| 空港 | 通常時 | バックアップ時 |
|---|---|---|
| 利尻 | RISHIRI RADIO | RISHIRI RADIO K(鹿児島) |
| 能登 | NOTO RADIO | NOTO RADIO C(新千歳) |
| 奥尻 | OKUSHIRI RADIO | OKUSHIRI RADIO O(大阪) |
| 稚内 | WAKKANAI RADIO | WAKKANAI RADIO C(新千歳) |
| 八丈島 | HACHIJO RADIO | HACHIJO RADIO N(那覇) |
利尻のバックアップが鹿児島、というのが象徴的です。地理的な近さではなく、負荷を散らす設計になっている。北の島の交信を、南の端が引き受ける。
そして新島と神津島は、どちらも「IZU RADIO F」(福岡)。バックアップ時にはコールサインそのものが変わるケースもあります。
末尾の一文字が聞こえたら、「今どこかが落ちている」という合図。知らなければ聞き流してしまう情報です。
現在の陣容(2026年) #
リーフレットは2022年10月版で、当時は「南日本は2024年度以降に構築予定。構築までは福岡・鹿児島・那覇FSCで運用」とされていました。
その後の動きを、公開情報で確認できた範囲でまとめます。
| 拠点 | 状況 |
|---|---|
| 新千歳対空センター | 稼働(2021年10月〜) |
| 大阪対空センター | 稼働(2021年10月〜) |
| 福岡対空センター | 2025年3月に福岡FSCから改組済 |
| 那覇のAEIS | 福岡AEISに統合済み(AIM-J 2026年後期版) |
| 鹿児島FSC・那覇FSC(AFIS等) | 福岡対空センターへの統合が予定されている(あわせて奄美空港のリモートRADIOも福岡へ移転予定) |
かつては仙台・中部国際にもFSCがありましたが、それぞれ新千歳・大阪へ統合されています。また、東京FSCから改組した東京FAIBは、発足直後にリモート運用も担っていましたが、現在は新千歳対空センターへ移っています。
AEISについては、那覇分が福岡に統合済みです(AIM-J 2026年後期版の記載による)。一方、AFISを含む鹿児島FSC・那覇FSC全体の統合が完了したかは、本記事では確認できていません。国交省が公開しているリーフレットは2022年10月版が最新で、この点は更新されていません。
統合は「業務ごとに順次」進んでいると見るのが実態に近そうです。AEISが先に動き、AFISやリモートRADIOは別のタイミングで移る——リーフレットの一覧を「今の担当表」として読むと、ずれます。
担当機関・呼出符号の最新は、必ずAIPでご確認ください。この記事は「対空センターとは何をする組織か」を整理したもので、個々の空港を今どこが受け持っているかの一覧としては使わないでください。
※この節はリモート空港(Wikipedia)の記述によります。
「Remote」から「Radio」へ #
もう一つ、2021年10月1日に変わったことがあります。
それまでリモート空港のコールサインは “Remote” でした。レディオ空港のリモート化が進み、いずれ管制空港とリモート空港の2区分になることを見据えて、コールサインが “Radio” に統一されました。
つまり——いま「〇〇 RADIO」と応答があっても、それが現地なのか遠隔なのかは、呼出符号からは分かりません。
そして、分からなくてよい設計なのだと思います。提供されるものが同じなら、どこから来ているかを気にする必要はない。気にすべきなのは「これは管制ではない」という一点だけです。
パイロットとして思うこと #
リーフレットを読んで、印象が変わった点が2つあります。
一つは、これが「集約」だけの話ではないこと。
24時間体制、他センターによる相互バックアップ、空港側が落ちても対空センターが引き受ける、そして呼出符号でそれを知らせる。人を減らすための集約というより、一つ落ちても続けられる形に作り替えた、と読むほうが実態に近いように思います。災害の多い国で、無線の応答が途切れないことを設計目標に置いた、ということです。
もう一つは、AEISの中身。
VFR機の位置報告、PIREP、民間訓練試験空域の情報。この3つは、ヘリでVFRを飛ぶ側にとって直接使える情報です。「対空センターは離島のレディオ空港のためのもの」と思っていたら、むしろ日常の経路上で使えるサービスでした。
そして急患搬送機への時間外対応。AIMOSの記事で気象庁側の同じ規定を見つけたとき、制度の文章の中に一行あるのが印象的だと書きました。対空援助の側にも、同じ一行がある。
夜中に人を運ぶために動く仕組みは、複数の役所にまたがって用意されている。知っていなければ使えません。そして両方とも「事前に連絡を」と書いてある。
まとめ #
- 対空センターは、飛行中の航空機に運航に必要な情報を無線電話で提供する「対空援助業務」の実施拠点。全国3か所(東日本・中日本・南日本)、航空管制運航情報官が24時間体制。2021年10月1日運用開始。
- 同日、運航拠点(FAIB)——東京・関西——も運用開始。発着調整・許認可申請の窓口の一元化とヘルプデスクを担う。
- 系統上、対空援助業務は管制業務ではなく運航情報業務(運航援助情報業務)の下にある。管制ではなく援助。
- 業務は2つ。AFIS(空港とその周辺/気象・他機・空港の状態・管制承認)とAEIS(航行中/気象・航空保安施設の運用・VFR機の位置報告・PIREP・民間訓練試験空域。運航者への中継も可能)。
- AFISは管制承認の伝達を行う。中身を決めるのは管制機関、伝えるのが運航情報官。
- 提供時間は各空港の運用時間に準じるが、急患搬送機への情報提供等、運用時間外も柔軟に対応可能。臨時延長・臨時提供は事前連絡。各センターの電話・メールは公開され「24時間お待ちしております」とある。
- AFISの提供は①対空センター ②FSC ③現地空港(事務所・出張所) ④一部時間帯の4区分。AEISは山上の子局(横津岳・上品山・三国山・三郡山・八重岳ほか)を含むサイトから提供。
- バックアップ運用中は呼出符号に一文字が付く。C=新千歳、O=大阪、K=鹿児島、F=福岡、N=那覇。例:RISHIRI RADIO K、NOTO RADIO C。利尻のバックアップが鹿児島など、地理的近さではなく負荷分散の設計。新島・神津島はバックアップ時にIZU RADIO Fとコールサインごと変わる。
- 拠点は新千歳・大阪・福岡の3対空センター+鹿児島FSC・那覇FSC。福岡は2025年3月にFSCから改組済。那覇のAEISは福岡AEISに統合済み(AIM-J 2026年後期版)で、八重岳・宮古は福岡側の担当。AFISを含む全体の統合完了時期は本記事では未確認。仙台・中部のFSCは新千歳・大阪へ統合済。統合は業務ごとに順次進むため、担当機関の最新はAIP/AIM-Jで確認すること。
- 2021年10月1日、リモート空港のコールサインが “Remote” から “Radio” に統一された。呼出符号からは現地か遠隔かが分からない——そして分からなくてよい。重要なのはこれは管制ではないという一点。
関連記事 #
- 運航情報官が「現地にいない」空港——リモート対空援助のいま
- 稚内空港で重大インシデント——作業車が走る滑走路に小型機が着陸。「見えにくさ」を考える
- そのMETARは誰がどう測っているのか——AIMOSと、完全自動化46空港のいま
本記事は、国土交通省航空局が公開している対空センターのリーフレット等の公開情報に基づき、現役ヘリコプターパイロットの視点から整理したものです。担当空港・呼出符号・提供時間は変更されることがありますので、実際の運航にあたっては必ずAIP及び最新の航空情報をご確認ください。考察部分には筆者の私見を含みます。
出典
- 国土交通省航空局「AFIS & AEIS 対空センター」リーフレット(2022年10月版。定義、AFIS/AEISの提供情報、提供機関一覧、バックアップ時の呼出符号、業務系統図) https://www.mlit.go.jp/koku/content/001514795.pdf
- AIM-Japan 2026年後期版(那覇AEISの福岡AEISへの統合)
- 国土交通省航空局「FAIB・対空センターについて」(2021年10月1日運用開始、FAIBの業務、リーフレットの配布) https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000325.html
- 国土交通省航空局交通管制部「空の安全を守るツバサノシゴト」航空管制運航情報官 https://www.mlit.go.jp/koku/jans/jobs/flight_infor.html
- 「リモート空港」Wikipedia(コールサインのRemote→Radio統一、福岡FSCの2025年3月改組、統合計画) https://ja.wikipedia.org/wiki/リモート空港 ※同記事の当該記述は2026年3月時点のもの
画像出典:Wikimedia Commons “Rishiri Airport 17-Sept-2018” by 皓月旗(CC BY-SA 4.0)。イメージ画像(利尻空港。運航情報官は現地におらず、新千歳対空センターがAFISを提供している)。
コメント
※ 名前を入力するだけでコメントできます(メールアドレスは任意)。 投稿いただいたコメントは管理者の承認後に表示されます。