そのMETARは誰がどう測っているのか——AIMOSと、完全自動化46空港のいま
前回までLVP/LVPDやRVR、離陸・着陸の最低気象条件を読んできました。どれも「数値がいくつか」で運航の可否が決まる話です。
では、その数値は誰が、どうやって測っているのか。
答えが気象庁のAIMOS(航空統合気象観測システム)です。そしていま、その観測は急速に自動化されています。
AIMOSとは何か #
気象庁の調達仕様書に、簡潔な定義があります。
航空統合気象観測システム(以下「AIMOS」という。)は、航空機の離着陸の安全に資するため、空港及び周辺の気象観測、その気象状態の監視、観測データの迅速な提供等を行うシステムであり、空港の気象観測を行う“空港システム”、複数の空港システムを制御・監視する“基地官署システム”、全ての空港システム及び基地官署システムの制御等を行う“センターシステム”から構成される。
3階層構造です。観測しているのは、
- 器械:気温、露点温度、滑走路視距離(RVR)、風向・風速、気圧、降水量、積雪・降雪の深さ
- 目視:雲(量・形・高さ)、視程、大気現象(雷・雨・霧など)
この上に、後述する自動化が乗ります。
いまのAIMOS——空港ごとに更新が続いている #
AIMOSは一斉更新ではなく、空港単位で製作・取付調整・運用切替を回していく方式です。
- 羽田は2018年6月にAIMOSへ更新。全観測装置を刷新し、RVR観測装置・シーロメーター・風向風速計を増設
- 直近では中部国際空港の空港システムが2025年10月17日公告で調達に入りました。代替滑走路整備を控えての更新で、履行期限は2026年6月30日
今年も工事が動いている——それが「AIMOSはいまどうなっているか」の一つの答えです。
もう一つの答え——完全自動化が46空港に #
しかし、運航する側にとってより大きいのはこちらでしょう。
2017年3月8日、関西・福岡・与論・与那国で航空気象観測の完全自動化が始まりました。そして、
2026年3月18日現在、46空港において航空気象観測の完全自動化を実施しています。
内訳は一部時間帯導入が34空港、終日導入が12空港です。
| 区分 | 空港 |
|---|---|
| 一部時間帯(34) | 成田国際・中部国際・関西国際・福岡・那覇・函館・釧路・旭川・青森・仙台・福島・新潟・富山・能登・静岡・大阪国際・南紀白浜・鳥取・出雲・広島・高松・松山・高知・山口宇部・北九州・佐賀・熊本・大分・宮崎・種子島・奄美・宮古・石垣・下地島 |
| 終日(12) | 福井・壱岐・屋久島・喜界・徳之島・沖永良部・与論・南大東・北大東・久米島・多良間・与那国 |
直近の拡大は、まさに今年でした。
| 開始日 | 空港 |
|---|---|
| 2026年2月27日 | 福井(終日) |
| 2026年3月5日 | 仙台・能登・静岡 |
| 2026年3月17日 | 高松・松山・佐賀・種子島 |
ペースを並べると、2024年7月に屋久島・沖永良部・久米島、2025年3月に青森ほか5空港、2026年3月に福井ほか7空港。年に1回、まとめて追加という運用です。
背景も明快で、ICAO ANNEX 3で自動観測システムによる通報が認められていること、米・カナダ・仏・英・オランダ・豪ですでに導入済みであること。そして日本では、気象庁・航空会社(スカイマーク/全日空/日本航空)・航空局の三者で導入可能性を評価し、開始後も評価検証を継続するという形で進められています。
実施時間帯は、空港ごとに細かく違う #
一部時間帯導入の空港は、運用が薄い夜間に自動化されます。しかも季節で切り替わる空港が多い。
| 空港 | 実施時間帯 |
|---|---|
| 成田・中部・関西・福岡・那覇 | 23時~翌日05時59分(定時観測は30分間隔) |
| 函館 | 5/1~10/24:20時30分~翌07時29分/10/25~4/30:20時30分~翌07時14分 |
| 仙台・青森 | 4/1~10/31:22時~翌07時29分/11/1~3/31:22時~翌07時14分 |
| 能登 | 19時30分~翌07時59分 |
| 南紀白浜 | 20時~翌08時29分 |
日の出・日の入りに合わせて終了時刻が動くのが分かります。現地に気象官署がある5空港(成田・中部・関西・福岡・那覇)と、担当官署が遠隔で見る空港(函館・釧路・旭川は新千歳航空測候所、青森・仙台・福島などは東京航空地方気象台)とで、体制も分かれています。
自動METARの中身——何をどう測っているか #
自動化された通報は、観測日時の後に識別語「AUTO」が入ります。中身の作り方は、要素ごとにまったく違います。
| 要素 | 作り方 |
|---|---|
| 風向・風速、気温・露点、QNH、RVR | 従来から器械観測をそのまま使用。自動化しても変わらない |
| 視程 | 視程計又はRVRのMOR(気象光学距離)の1分平均値(15秒間隔で算出) |
| 現在天気(TS以外) | RVR(又は視程計)・温度計・湿度計・雨量計からRA/SN/RASN/SNRA/FG/BR/HZ/UPを15秒間隔で判別(SQは風向風速計から) |
| 雲量・雲底の高さ(CB/TCU以外) | シーロメーター+風向風速計で15秒間隔に算出(前30分の観測値に時間的重み) |
| 雷電(TS)、CB・TCU | 雷監視システム(LIDEN)+気象レーダーで5分間隔に検出 |
風もRVRも、実はもともと器械の値でした。自動化で本当に変わるのは視程・現在天気・雲——つまり従来は人が目で見ていた3つです。
そして、これらを組み立てて自動METAR/SPECI報を作っているのがAIMOSのセンターシステム。二重構成にしたうえで、大阪にもバックアップ局としてのセンターシステムを設置し、地域的な冗長性を確保している、と明記されています。
「視程」の意味が変わる #
いちばん本質的な変化がここです。
従来の視程は、庁舎屋上などから360度見渡して観測する卓越視程でした。自動化後は、滑走路付近に設置した機器のMORになります。
観測値の特性が違う。それでも気象庁は、はっきりこう書いています。
IMC/VMCや最低気象条件の判断には卓越視程と同等に扱う
扱いは同じ、しかし中身は別物。この二重性を知っているかどうかで、数値の読み方は変わってきます。
技術の限界は、公式資料に正直に書かれている #
ここが実務でいちばん重要な部分です。
① 通過しない雲は、観測できない
シーロメーター上空を通過しない雲(山裾に留まっている雲など)は観測できません。
② 雲形は判別できない
だから、別途検出する重要な対流雲(CB、TCU)を除いて、雲形の通報は省略されます。
③ TS以外の「空港周辺の現象」は通報できない
自動METAR/SPECI報では、雷電(TS)以外の空港周辺の現象や、部分的な霧の状況は通報できませんので、提供しているカメラ画像をご活用ください。
④ 固形降水の種類の判別が限定的
自動で通報できる降水種別は雨(RA)・雪(SN)・みぞれ(RASN/SNRA)に限られます。
山裾の雲と、部分的な霧。ヘリで飛ぶ側からすると、いちばん知りたいものが2つとも「自動では出ない」項目に入っています。ここは覚えておいて損がありません。
冬は目視に戻る空港がある #
④の限界には、実務的な手当てがあります。
出発機への防除氷液の有効時間(HOT)の設定を支援するため、自動化実施時間帯に降雪(雪などの固形降水)が予想される場合などには、自動METAR/SPECI報の通報から、日中と同じ方法による目視観測・通報に切り替えます。
対象は29空港(成田・中部・関西・福岡・函館・釧路・旭川・青森・仙台・福島・新潟・富山・能登・静岡・大阪・南紀白浜・鳥取・出雲・広島・高松・松山・高知・山口宇部・北九州・佐賀・熊本・大分・宮崎・種子島)。
自動化しきらない、という判断が制度に組み込まれている。個人的には、ここに好感を持ちました。
自動SPECIの「2分・5分」ルール #
自動観測は、きめ細かく現象の悪化・回復を拾えます。しかし拾いすぎるとSPECIが出過ぎる。
そこで、視程(VIS)・シーリング(CLG)・現在天気の変化による自動SPECI報には、現象の継続時間が条件として置かれました。
- 悪化時は2分程度(SPECI基準を下回ってから発信まで、最長で2分弱)
- 回復時は5分程度(SPECI基準以上となってから発信まで、最長で5分弱)
悪化は早く、回復は慎重に。非対称なのが、いかにも安全側の設計です。
ヘリに直接効く一文があった #
資料を読んでいて、思わず二度見した箇所があります。
空港運用時間臨時延長(以下単に臨時延長)時又は夜間の緊急搬送ヘリ運航等のための航空気象業務臨時提供(以下単に臨時提供)時、(略)自動METAR/SPECI報を(略)通報するとともに、照会に応じて自動観測(器械観測)データを用いたQ報を通報します。
「夜間の緊急搬送ヘリ運航等のための航空気象業務臨時提供」。
ドクターヘリや防災ヘリが夜間に空港を使うとき、気象業務を臨時に立ち上げてもらう——その枠組みが、完全自動化の資料に明記されています。そして自動化後は、その臨時提供でも自動METAR/SPECI報とQ報が出る。
夜中に人を運ぶために、観測が動く。制度の文章の中に、こういう一行があるのは知っておいてよいと思います。
障害時と、カメラ画像 #
機器障害で一部要素が自動観測できなくなった場合は、別紙6に定める代替措置が執られます。加えて気象庁は、限界を補う手当てとして次の2つを挙げています。
- 空港の実況画像データ(カメラ画像)の提供
- 気象状況に関する不明点等の問い合わせには、航空気象官署で対応
分からなければ聞ける窓口が残っている。完全自動化といっても、人がいなくなるわけではない、という設計です。
前回までの話とのつながり #
LVP/LVPDの適用判断に使うRVRも、最低気象条件と突き合わせる視程も、出どころはこのAIMOSです。
そしてブリーフィングで使うMetAir(航空気象情報提供システム)にも、こう書かれています。
MetAirでは、従来のMETAR/SPECI報又はSCAN報に代わり、自動METAR/SPECI報が表示されます。
普段見ている画面の裏側が、ここにつながっている。PIREPが従来どおり自動METAR/SPECI報に付加される点も、変わっていません。
なお2026年3月の改訂では、「飛行場カテゴリー予想」の提供が終了し、飛行場時系列情報へ移行しました(福井空港が提供対象に追加)。あわせて「新石垣空港」が「石垣空港」に名称変更されています。
パイロットとして思うこと #
自動化そのものに、私は否定的ではありません。人が見る限り、観測は人の数と勤務時間に縛られます。夜間の観測を自動で回せるなら、そのぶん飛べる時間が増える。離島の空港で終日の自動METAR/SPECIが出るようになったことは、素直に前進です。
そのうえで、2つのことを分けて持っておきたいと思いました。
一つは、数値の意味が静かに変わっていること。視程が卓越視程からMORになっても、扱いは同じとされる。運用上はそれでよくても、「同じ数字だが別の測り方」であることは、頭の隅に置いておきたい。
もう一つは、出ない情報があること。山裾に留まっている雲、部分的な霧、雷以外の空港周辺の現象。METARに書かれていない=存在しない、ではありません。
これは群馬の事故報告書を読んだときに書いたことと、同じ形の話です。知っていることと、見えていることを混同しない。METARは「空港のある一点で機械が測った値」であって、これから自分が飛ぶ空間の全部ではない。
だからこそ、気象庁がカメラ画像を使ってくださいと明記しているのは正しい。そして山を飛ぶなら、そのカメラすらない場所をどう埋めるかが、こちらの仕事になります。
まとめ #
- AIMOS(航空統合気象観測システム)は気象庁のシステムで、空港システム/基地官署システム/センターシステムの3階層構成。気温・露点・RVR・風・気圧・降水量・積雪深を器械で、雲・視程・大気現象を目視で観測してきた。
- ハード面では空港ごとに更新が継続中。羽田は2018年6月にAIMOS化、直近は中部国際空港の空港システムが2025年10月公告・履行期限2026年6月30日(代替滑走路整備を控えた更新)。
- 運用面では航空気象観測の完全自動化が拡大。2017年3月8日開始(関西・福岡・与論・与那国)、2026年3月18日現在46空港(一部時間帯34/終日12)。
- 直近の追加は2026年2月27日 福井(終日)、3月5日 仙台・能登・静岡、3月17日 高松・松山・佐賀・種子島。拡大は年1回まとめてのペース。
- 根拠はICAO ANNEX 3が自動観測システムによる通報を認めていること。気象庁・航空会社(SKY/ANA/JAL)・航空局の三者で評価し、開始後も検証を継続。
- 自動化後は識別語「AUTO」が入る。風・気温・露点・QNH・RVRは元々器械観測なので変わらない。変わるのは視程・現在天気・雲——従来は人が目で見ていた3つ。
- 視程=視程計又はRVRのMOR(1分平均・15秒間隔)、現在天気=RVR/温湿度計/雨量計から15秒間隔で判別、雲=シーロメーター+風向風速計で15秒間隔、TS・CB・TCU=LIDEN+気象レーダーで5分間隔。
- 視程は卓越視程からMORへ変わるが、IMC/VMCや最低気象条件の判断には卓越視程と同等に扱うとされている。扱いは同じ、中身は別物。
- 自動METAR/SPECI報を作るAIMOSセンターシステムは二重構成+大阪にバックアップ局を置き、地域的な冗長性を確保。
- 技術の限界も明記。①シーロメーター上空を通過しない雲(山裾に留まっている雲など)は観測できない ②雲形は判別できない ③雷電以外の空港周辺の現象や部分的な霧は通報できない ④固形降水の種別はRA/SN/RASN/SNRAに限られる。③にはカメラ画像の活用が案内されている。
- ④への手当てとして、降雪が予想される場合などは29空港で目視観測に切り替える(防除氷液の有効時間=HOTの設定支援のため)。
- 自動SPECIは悪化2分程度・回復5分程度の継続を条件とする非対称な設計。
- 「夜間の緊急搬送ヘリ運航等のための航空気象業務臨時提供」時にも、自動METAR/SPECI報と照会に応じたQ報が通報される。
- MetAirの表示も、従来のMETAR/SPECI報に代わって自動METAR/SPECI報になる。PIREPの付加は従来どおり。2026年3月改訂で「飛行場カテゴリー予想」は提供終了し飛行場時系列情報へ、「新石垣空港」は「石垣空港」へ改称。
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本記事は、気象庁が公表している航空気象観測の完全自動化に関する資料および調達関係資料に基づき、現役ヘリコプターパイロットの視点から整理したものです。実施空港・実施時間帯は変更されることがありますので、最新の情報は気象庁の公表資料をご確認ください。考察部分には筆者の私見を含みます。
出典
- 気象庁「航空気象観測の完全自動化」(2026年3月18日現在46空港、実施空港一覧) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/27_jidoka/27_jidoka.html
- 気象庁「『航空気象観測の完全自動化』と『自動METAR/SPECI報』について」(2016年8月、最終改訂2026年3月。観測アルゴリズム、実施時間帯、限界、冬季の目視切替、臨時提供、センターシステムの冗長化) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/27_jidoka/jidoka_gaiyo.pdf
- 気象庁 配信資料に関するお知らせ(令和7年12月5日。福井・仙台ほか7空港の完全自動化開始と時間帯) https://www.data.jma.go.jp/suishin/oshirase/pdf/20251205.pdf
- 気象庁 契約の概要調書「中部国際空港航空統合気象観測システムの製作及び取付調整」(令和7年10月17日。AIMOSの定義と3階層構成、履行期限) https://www.data.jma.go.jp/choutatsu/data/R07/07%20seifuchoutatsu/07%20seif/2025101701.pdf
- 気象庁「空港気象観測システムによる観測」(観測要素) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/22_amos/22_amos.html
画像出典:Wikimedia Commons “AGIVIS 2000 Runway Visual Range System” by Aeronautical & General Instruments Limited(CC BY-SA 3.0)。イメージ画像(滑走路脇に設置されたRVR観測装置)。
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