操縦技能証明保有者に新設「技能発揮訓練」——令和7年12月施行、2年ごとの義務的訓練を解説

令和7年12月1日、改正航空法が施行され、操縦技能証明を持つパイロットに「技能発揮訓練」の受講義務が新たに課された。

航空法第71条の5第1項を根拠とする制度で、ヒューマンファクターや技能発揮に関する訓練を2年ごとに登録訓練機関で修了することが求められる。


何が変わったか #

従来、日本の操縦技能証明(技能証明)には定期的な「リカレント訓練」の義務はなかった。技能証明に有効期限はなく、技能審査の要件も技能証明の種類によって異なるが、ヒューマンファクターやCRM(乗務員資源管理)のような「ソフトスキル」についての体系的な訓練要件は存在しなかった。

今回新設された技能発揮訓練は、この空白を補うものだ。


訓練の内容 #

訓練科目 #

以下の3科目が定められている。

  1. 技能発揮訓練の実施の意義
  2. ヒューマンファクターの概要
  3. 技能発揮訓練の概要

航空事故のヒューマンファクター的側面や、パイロット自身がどのように技能を発揮するかという視点が中心に据えられている。

訓練時間 #

3時間以上(講義および演習を含む)

実施形式 #

集合訓練またはオンライン訓練(リアルタイムで双方向通信ができる形式)のいずれかで実施される。


有効期間 #

修了日から2年間有効。2年ごとに受講・修了が求められる。


登録訓練機関とは #

技能発揮訓練は、国土交通省の地方航空局(東京または大阪)に登録された「登録訓練機関」が実施する。

登録の主な要件 #

要件内容
管理者25歳以上であること
講師18歳以上、操縦技能証明保有、直近3年以内に機長として航空交通管制圏の空港で2回以上の離着陸実績
定員講師1人あたり同時受講者20人以内
登録有効期間3年間(更新制)

申請と費用 #

  • 申請先:地方航空局(東京・大阪)
  • 登録免許税:90,000円

訓練機関側の登録要件として、講師には「直近3年以内の現役的な飛行実績」が求められている点が特徴的だ。机上の専門家ではなく、現役に近い経験者が教えることを前提とした設計といえる。


ヘリパイロットとして思うこと #

率直に言えば、こういった訓練は「義務だからやる」ではなく、本来必要なものだったと思う。航空事故のかなりの割合がヒューマンファクターに起因している中で、「技能証明があれば訓練義務なし」という状況はむしろ例外的だった。

3時間という時間は長くはないが、ヒューマンファクターについて意識的に向き合う機会を定期的に持つことの意義は小さくない。特にヘリコプター運航では、単独飛行や少人数の乗員で意思決定しなければならない場面が多く、CRM的な思考は欠かせない。

一方、訓練の質については登録訓練機関ごとに差が出る可能性もある。「形式的にこなす3時間」ではなく、実際の訓練効果につながる内容になるかどうかは、各機関の運営姿勢にかかっている。制度の枠組みは整ったが、中身をどう充実させるかは今後の課題だろう。


まとめ #

項目内容
施行日令和7年12月1日
法的根拠航空法第71条の5第1項
対象者操縦技能証明を有する者
訓練時間3時間以上(講義・演習含む)
実施形式集合またはオンライン
有効期間修了日から2年間
実施機関登録訓練機関
登録免許税90,000円

2年に一度の訓練とはいえ、操縦技能証明を持つパイロット全員に関わる制度変更だ。受講できる登録訓練機関の情報については、日本航空機操縦士協会(JAPA)や地方航空局の最新情報を確認してほしい。


出典:技能発揮訓練を行う登録訓練機関の制度について(公益社団法人日本航空機操縦士協会)

ヒーロー画像:「Apache Pilot Training on Simulator MOD 45154746」 by Peter Davies/MOD / Wikimedia Commons / Open Government Licence v1.0


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