織姫と彦星、ヘリで会いに行くと何時間? 燃料代は?
7月7日、七夕。年に一度だけ天の川を渡って会えるという織姫と彦星ですが、パイロットとしてはどうしても気になってしまいます。
――で、あの二人、実際どれくらい離れてるの? ヘリで会いに行けるの?
というわけで、恋物語をいったん脇に置いて、海里と燃料消費で真面目に計算してみました。
まず二人の「正体」と距離 #
織姫はこと座のベガ、彦星はわし座のアルタイル。地球からの距離はベガが約25光年、アルタイルが約16.7光年で、天球上では約34°離れています。
余弦定理で二星間の実距離を出すと、約15光年。これを航空屋の単位に直すと――
- 1光年 ≈ 9.46×10¹² km ≈ 5.11×10¹² NM
- 15光年 ≈ 約7.66×10¹³ NM
七夕の距離、いきなり桁が違います。
100 KTのヘリで飛ぶと #
まずは巡航100 KT(=100 NM/h)でまっすぐ飛んだ場合。
7.66×10¹³ NM ÷ 100 KT = 約7.7×10¹¹ 時間 ≒ 約8,800万年
片道で、恐竜が絶滅してから今日までよりも長い時間がかかります。年に一度の逢瀬どころか、出発した頃にはまだ人類が影も形もありません。
ちなみに光の速さなら15年。100 KTのヘリは光の約580万分の1なので、その差がそのまま所要時間の差になって返ってきます。
AW109で行くと燃料代は? #
せっかくなので機体を決めて、燃料代も出してみましょう。AW109、巡航150 KT・燃料消費220 kg/h と置きます。
飛行時間
7.66×10¹³ NM ÷ 150 KT = 約5.1×10¹¹ 時間(約5,800万年)
100 KTより速い分、ちょっとだけ短縮されました(それでも5,800万年)。
総燃料
220 kg/h × 5.1×10¹¹ h = 約1.12×10¹⁴ kg
トンに直すと約1,120億トンのJet A-1。容量にすると約1.4×10¹⁴ L です。
燃料代
直近のジェット燃料相場をざっくり145円/Lとすると――
1.4×10¹⁴ L × 145円 = 約2.0×10¹⁶円 = 約2京円
日本の国家予算(約110兆円)で言うと、約180年分。燃料代だけで国が180回まわせます。
そして給油の悪夢 #
さらに現実的な要素を足しましょう。300浬ごとに給油するとしたら――
7.66×10¹³ NM ÷ 300 NM = 約2,553億回のフュエルストップ
1回の給油を15分で済ませても、給油の待ち時間だけで約700万年が上乗せされます。燃料伝票の処理だけで天の川が先に枯れそうです。
まとめ #
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 距離 | 約15光年 = 約7.66×10¹³ NM |
| 飛行時間(150 KT) | 約5,800万年 |
| 総燃料(220 kg/h) | 約1,120億トン |
| 燃料代 | 約2京円 |
| 給油回数(300浬ごと) | 約2,553億回 |
しかもこれ、無風・給油拠点無限・機体無故障という、W&Bもへったくれもない完全理想条件での話です。実運航なら、風の補正も、燃料アームの内挿も、当然のように効いてきます。
……こうして数字にしてみると、年に一度でも会えるあの二人は、実はとんでもない高性能で天の川を渡っているのかもしれません。少なくともAW109より圧倒的に燃費がいいのは間違いなさそうです。
短冊に「安全運航」と書きつつ、今年の七夕も空を見上げようと思います。
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本記事は七夕にちなんだお遊びコラムです。星までの距離は公表値、燃料密度(約0.8 kg/L)・燃料価格・機体諸元は概算の仮定に基づきます。当然ながら、現行の運航規程で天の川を渡ることはできません。
画像出典:Wikimedia Commons “Wide-field view of the Summer Triangle” by A. Fujii(パブリックドメイン)。夏の大三角——上のベガ(織姫)と下のアルタイル(彦星)、天の川を挟んで向かい合う。
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