視認進入と目視進入は何が違う?——IFRの「見て降りる」2つの進入を整理する(日本版)

視認進入と目視進入は何が違う?——IFRの「見て降りる」2つの進入を整理する(日本版)

IFR(計器飛行方式)で飛んでいても、最後は「滑走路が見えたら、計器進入をぜんぶ辿らずに直接降りたい」場面がある。そのための“見て降りる”方法が、日本には2つある——**視認進入(Visual Approach)目視進入(Contact Approach)**だ。

名前が似ているうえ、どちらも「目で見て降りる」ので、混同されやすい。しかも直感に反して、「目視進入」のほうが悪天候でも使える。この記事で、両者の違いをスッキリ整理しておきたい。

大前提:どちらも「IFRのまま」ショートカットする方法 #

まず押さえたいのは、視認進入も目視進入も、IFRの飛行計画のまま行うということだ。VFR(有視界飛行方式)に切り替えるわけではない。管制の管理下にいながら、公示された計器進入方式(ILSやRNAVの手順)の一部または全部を省略して、より直接的に滑走路へ向かう——それが共通の目的だ。

計器進入をフルに辿ると遠回りになることは多い。天気が良ければ「見えているんだから、まっすぐ行かせて」となる。その受け皿が、この2つというわけだ。

では何が違うのか。ポイントは大きく2つ、**「誰が言い出せるか」「必要な天候」**だ。

視認進入(Visual Approach) #

空港(または先行機)を目視できていることを前提に、レーダー管制のもとで任意の経路をとって着陸する方式。

  • 言い出せる人管制官からも、パイロットからも。管制官が「Report airport in sight(空港が見えたら知らせて)」と促し、パイロットが視認を報告すると、視認進入の許可が出る、という流れが典型。
  • 必要な環境ターミナルレーダー管制の環境が前提。レーダーで交通を捌きながら滑走路まで誘導する。
  • 天候(VMC維持が条件):おおむね
    • 飛行視程 5,000m以上+雲から一定の間隔(水平600m・上方150m・下方300m)を保つ、または
    • 地上視程 5,000m以上で、雲高が地表から300m以上
  • 間隔の責任:先行機がいる場合、その先行機との間隔と後方乱気流の回避はパイロットの責任になる(自機で相手を見て間隔をとる)。

イメージは「よく晴れた日に、レーダーで場周に乗せてもらい、滑走路を見ながらパターンで降りる」。都市部の大きな空港で、混雑をさばきつつ効率よく降ろすときの定番だ。

目視進入(Contact Approach) #

計器進入方式が設定された空港で、パイロットが地表を視認しながら、計器進入のコースを省略してより直接的に進入する方式。

  • 言い出せる人パイロットのみ管制官からは絶対に示唆しない。使いたければ操縦士が自分から「Request contact approach」とリクエストする必要がある。
  • 必要な環境レーダー管制下にない空港でも可能。レーダーがなくても成立する。
  • 天候
    • 地上視程 1,500m以上が報じられていること、
    • 計器進入方式が開始される高度より下に雲がないこと(雲から離れて飛べること)
    • 空港を目視できること。
  • やること:地表・地物を目印に、自分で経路をつくって空港へ向かう。

イメージは「視程はそこそこだが雲下は飛べる、という微妙な天気のとき、地面を見ながら手続きを省いて直接降りる」。レーダーのないローカル空港で効いてくる。

いちばん大事な違い:ここだけ覚える #

紛らわしい2つだが、押さえるべきは次の3点だ。

視認進入(Visual)目視進入(Contact)
誰が言い出せる管制官・パイロット両方パイロットのみ(管制官は示唆しない)
必要な天候高い(視程5,000m級・VMC維持)低い(地上視程1,500m・雲から離れて)
レーダーターミナルレーダーが前提なくても可
主に見るもの空港(または先行機)地表を視認しつつ空港へ

とくに引っかかりやすいのが真ん中の行だ。「目視進入」という語感から“もっとよく見えている状態”を想像しがちだが、実際は逆。目視進入のほうが、視程1,500mというより悪い条件でも使える。晴天でレーダーに乗る視認進入と、微妙な天気に地面を頼る目視進入——必要な天候の高さが逆、と覚えると混乱しない。

もう一つ実務で効くのが上の行。目視進入は管制官から「どうぞ」とは言われない。得なショートカットに見えても、欲しければ自分からリクエストしなければ始まらない。逆に視認進入は、管制官が「見えたら言って」と水を向けてくることが多い。

サークリング進入・VFRとの区別 #

ついでに、隣接する概念とも線引きしておく。

  • サークリング(周回)進入:これは計器進入方式そのものの一部。公示された計器進入で降りてきて、別の滑走路に着けるため空港を見ながら場周する。視認/目視進入とは「計器進入手順の中か外か」が違う。
  • VFR:視認進入も目視進入もIFRのまま。VFRに切り替えるわけではないので、IFRの管制間隔の枠組みは維持される。

まとめ #

  • 視認進入(Visual)も目視進入(Contact)も、**IFRのまま計器進入を省いて“見て降りる”**方法。目的は同じ。
  • 決定的な違いは2つ:①言い出せる人(Visual=管制官もOK/Contact=パイロットのみ)、②必要な天候(Visual=高い/Contact=低い)。
  • 語感に反して、目視進入のほうが悪天候でも使える(地上視程1,500m・雲から離れて・レーダー不要)。
  • 得なショートカットの目視進入は、自分からリクエストしないと始まらない
  • サークリングは計器進入手順の内側、VFRとは別物、という区別も押さえておく。

“見て降りる”は効率的だが、その分だけ間隔や障害物回避の責任が自分に寄ってくる。名前の紛らわしさに惑わされず、条件と責任の所在を正しく掴んでおきたい。

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本記事は、日本の管制方式基準およびAIM-J等の公開情報をもとに、現役ヘリコプターパイロットの視点から整理したものです。数値・条件は概要であり、実運航では最新の管制方式基準・AIP・運航規程を確認してください。


出典

画像出典:Wikimedia Commons “Runway of Phoenix Goodyear Airport, Arizona, USA, seen from a Piper PA-28 cockpit” by Dreamliner 2012(CC BY-SA 3.0)

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