Flightradar24で年35ドルの機能が、ADS-B Exchangeでは無料——2つの航空機追跡サービスを比較する

Flightradar24で年35ドルの機能が、ADS-B Exchangeでは無料——2つの航空機追跡サービスを比較する

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以前、ADS-B Exchangeの使い方とFlightradar24がなぜ機体を映せるのかを、それぞれ別の記事で書きました。

「で、結局どっちを見ればいいのか」を書いていなかったので、今回は正面から比べます。

調べてみて、いちばん驚いたのはここでした。Flightradar24で年34.99ドル(Goldプラン)を払うと見えるようになる項目が、ADS-B Exchangeでは無料で見えます。しかも、ADS-B Exchangeのほうが項目数は多い。


先に結論——早見表 #

Flightradar24ADS-B Exchange
運営Flightradar24 AB(スウェーデン)JETNET傘下(2023年1月買収)
受信機数50,000台以上25,000台以上
データ源ADS-B+MLAT+衛星ADS-B+レーダー+FLARM+UAT+ADS-CADS-B+Mode S+MLAT(UAT/ADS-R/TIS-B/ADS-Cも区別表示)
機体の非表示あり(FAA LADD/運航者の申請)なし(無検閲を掲げる)
更新間隔—500ミリ秒
無料で見える情報基本項目のみほぼ全項目
IAS/TAS/風/OATGold(年34.99ドル)以上無料
QNH/FMS選択高度/バンク角機能説明に記載なし無料で表示
有料プランSilver $14.99/Gold $34.99/Business $499.99(年額)広告非表示 $29.95/年($2.99/月)
履歴7日/90日/365日/3年(プラン別)2020年3月以降のリプレイ
路線・便名・スケジュール強い(150万機超のデータベース)弱い
日本語ありなし(英語のみ)
API別売(従量課金)$10/月・10,000リクエスト(非商用)

ざっくり言うと、こうなります。

  • Flightradar24は「航空機を調べる」ためのサービス——どこから来て、どこへ行き、何という便なのか
  • ADS-B Exchangeは「電波を見る」ためのサービス——その機体が実際に何を放送しているのか

① データソース——片方は雑食、片方は受信したものだけ #

Flightradar24は、自社の説明によると7大陸と宇宙に50,000台以上の受信機を持ち、そこにいろいろなものを足し込んでいます。

  • ADS-B(主力)
  • MLAT(Mode Sしか積んでいない機体の位置を計算で出す)
  • 衛星ADS-B(地上局のない海上・極地)
  • レーダーデータ(北米とオーストラリアのみ)
  • FLARM/Open Glider Network(グライダー)
  • UAT(主に米国の小型機、18,000ft未満)
  • ADS-C(洋上などの衛星経由)

さらに、150万機を超える機体データベースと商用のフライトプラン・スケジュールデータを突き合わせています。「JL123便」と出てくるのは、この突き合わせの結果です。

ADS-B Exchangeは対照的に、受信機が拾ったものを、拾ったまま出すのが基本です。ADS-BとMode S、そしてMLAT。地図上ではADS-B/UAT・ADS-R/MLAT/TIS-B/ADS-C/その他を区別して表示・絞り込みできるようになっています。

位置がどうやって得られたかが、機体ごとに明示されるわけです。MLATで割り出した推定位置なのか、機体自身が放送したADS-Bなのかで、信頼度は当然違います。そこを曖昧にしない設計です。

ここが最初の性格の違いです。Flightradar24は「空の全体像」を作りにいき、ADS-B Exchangeは「受信できた事実」を出す。

② 見えない機体——フィルタリング方針 #

これが2つのサービスのいちばん有名な違いです。

Flightradar24には、機体を非表示にする仕組みがあります。同社が挙げている「機体が表示されない理由」は4つです。

  1. ADS-Bトランスポンダを積んでいない
  2. Mode Sはあるが、MLATのカバー範囲外
  3. ADS-Bのカバー範囲外
  4. 所有者または運航者によってブロックされている

4番目がポイントです。米国ではFAAのLADD(Limiting Aircraft Data Displayed)という制度があり、機体の所有者が申請すると、データを受け取る事業者はその機体を公開表示できなくなります。

ADS-B Exchangeは、この方針を取りません。同社の説明はこうです。

ADS-B Exchangeは、世界中の航空機の動きを、検閲やフィルタリングなしに透明な形で表示するグローバルプラットフォームです。

他の多くの追跡サービスと異なり、ADS-B Exchangeは「上空に何がいるのか」というシンプルな問いに答えることに集中しています。

軍用機も、要人輸送機も、そのまま出ます。ジャーナリズムや紛争監視、政府の説明責任の追跡といった用途でADS-B Exchangeが使われるのは、この一点によります。

「Flightradar24には映らないのに、実際には飛んでいる」という機体を確かめたいときは、ADS-B Exchangeを開く——これが最も実用的な使い分けです。

なお、2023年1月にADS-B ExchangeはJETNET(ビジネス航空のデータ企業)に買収されました。方針が変わるのではないかと当時ずいぶん言われましたが、2026年9月時点の公式サイトは依然として「検閲やフィルタリングなし」を掲げています。

③ 料金——ここが本題 #

Flightradar24 #

年額での価格です(月払いだと割高になります)。

プラン年額主な内容
Free0広告あり、履歴7日、ブックマーク1、保存フィルタ1、3Dビュー3回、30分でタイムアウト
Silver$14.99広告なし、履歴90日、ブックマーク10、フィルタ10、3Dビュー無制限、タイムアウトなし
Gold$34.99履歴365日、ブックマーク25、ATC境界(FIR/UIR)、リスト表示、雲レイヤー、Extended Mode S
Business$499.99履歴3年、滑走路データ、フリート表示、商用利用可

無料版で地味に効くのが「30分でタイムアウト」です。Webの地図を開きっぱなしにして監視する、という使い方は無料版ではできません。

そして商用利用はBusinessプランでのみ許可されています。業務で使うなら年499.99ドル、という線引きです。

ADS-B Exchange #

こちらはシンプルです。

内容
無料地図・機体詳細・MLAT・フィルタなど、機能はほぼ全部使える。広告あり
広告非表示$29.95/年(または$2.99/月)。広告が消え、衛星を含むプレミアム地図レイヤーと気象レーダー(米国・ドイツ)が付く

有料にしても、見える情報は基本的に増えません。増えるのは地図の見やすさです。情報へのアクセスと課金が切り離されている——ここがFlightradar24との設計思想の違いです。

④ 情報の深さ——年34.99ドルの境目 #

ここが今回いちばん調べ甲斐のあったところです。

Flightradar24の「Extended Mode S」はGold以上 #

機体がMode Sで放送する拡張データ(Extended Mode S、BDSレジスタ)を、Flightradar24も取り込んでいます。ただし表示は有料です。同社の説明はこうです。

GoldおよびBusinessプランの加入者は、Extended Mode Sデータと、FIR/UIRの位置を含む追加の機体情報に独占的にアクセスできます。

Goldで解放される項目は、

分類項目
SpeedIndicated Airspeed(IAS)/True Airspeed(TAS)/Mach
AltitudeGPS Altitude
WeatherWind(風向・風速)/Outside Air Temperature(OAT)
そのほかFIR/UIR

これが年34.99ドルの側にあります。

ADS-B Exchangeは、同じものが無料で、しかも多い #

以前の記事で1機クリックして出た項目を整理しましたが、改めて並べると差がはっきりします。

ADS-B Exchangeの表示項目Flightradar24
Groundspeed/Baro. altitude/WGS84 altitude/Vert. Rate/Track無料で表示
IAS/TAS/MachGold以上
風向・風速/TAT・OATGold以上
GPS(幾何)高度Gold以上
QNH(機体が設定している高度計規正値)機能説明に記載なし
Sel. Alt./Sel. Head.(FMSの選択高度・選択方位)機能説明に記載なし
True Heading/Magnetic Heading/Magnetic Decl.機能説明に記載なし
Roll(バンク角)/Track Rate機能説明に記載なし
NACp/SIL/NACv/NICbaro/RC(精度・完全性指標)機能説明に記載なし
Source(ADS-B/MLATの別)/RSSI/Msg. Rate/Receivers/Last Seenデータソース表示のみ

いちばん実用的に効くのは、おそらくSel. Alt.(選択高度)です。その機体がオートパイロットに何ftをセットしているかが見えるので、「いま降下中のこの機は、あとどこまで降りるつもりか」が読めます。次に何をするつもりかが分かる、という意味では、他のどの項目とも性質が違います。

QNHも同様で、その機体が設定している高度計規正値がそのまま出ます。

ただし、出ないときは出ない #

公平のために書いておくと、これらは機体が実際に放送していなければ表示されません。Flightradar24のフォーラムでも「IAS/TAS/Mach/風/気温がいつもN/A」という質問が繰り返し出ていて、モデレーターの回答は「MLATや推定位置、衛星経由の機体ではExtended Mode Sは得られない」というものでした。

これはADS-B Exchangeでも同じです。受信機が拾えていない情報は、どちらのサービスでも出ません。

⑤ 履歴と再生 #

Flightradar24ADS-B Exchange
無料7日2020年3月以降のリプレイ
有料Silver 90日/Gold 365日/Business 3年(有料でも変わらず)
API2016年5月11日まで遡れる(別料金)企業向けの日次データ製品

無料での遡りは、ADS-B Exchangeが圧倒的です。2020年3月まで戻れます。一方でFlightradar24は、Businessプラン(年499.99ドル)で3年、APIなら2016年までという商用グレードの厚みがあります。

事故・インシデントの経路を後から検証したい、という用途では、この差が効いてきます。

⑥ API #

Flightradar24ADS-B Exchange
個人向けなし(プランに含まれない)$10/月・10,000リクエスト(RapidAPI経由、非商用)
商用従量課金(pay-as-you-go)Enterprise 4製品(Live positions/Live operations/Daily positions/Daily operations)
履歴2016年5月11日以降日次データ製品

Flightradar24のAPIは、Silver/Gold/Businessのどのプランにも含まれません(公式FAQに明記)。完全に別売りです。

個人が趣味で何か作るなら、ADS-B Exchangeの月10ドル・10,000リクエストのほうが入りやすいと思います。

⑦ 受信機を立てると、どうなるか #

どちらも、自分でADS-B受信機を設置してデータを提供する(フィーダーになる)と特典があります。

Flightradar24ADS-B Exchange
特典Businessプラン(年499.99ドル相当)が無料+招待制のContributorプラン広告非表示の地図が無料(登録不要、adsbexchange.com/myipで有効化)
機材毎週30〜50セットの受信機一式を無償配布自前で用意(キットの販売あり)

Flightradar24の特典は、金額だけ見ればかなり大きい。年499.99ドルのBusinessプランが無料になります。

とはいえ、どちらか一方にしか送れないわけではありません。同じ受信機から複数のサービスへ同時に送るのが一般的です。

⑧ 日本で使うとき #

日本固有の事情として、いくつか。

日本語UIはFlightradar24にしかありません。ADS-B Exchangeは英語のみです。以前の記事で操作手順を書いたのは、まさにここが入口の壁になるからでした。

便名・スケジュールの照合はFlightradar24が圧倒的に強いです。150万機超のデータベースと商用スケジュールデータを持っているので、「この便はどこ発か」「遅れているか」という問いには向いています。ADS-B Exchangeにこの用途を求めても噛み合いません。

一方で、ADS-B Outを積んでいない機体は、どちらでも映りません。日本の回転翼機には非装備の機体も多く、その場合はMLAT頼みになります。MLATは受信機が複数台届いている場所でしか成立しないので、山間部や低高度では、両方とも消えます。

受信機の密度も効きます。Flightradar24は50,000台、ADS-B Exchangeは25,000台。単純な台数では倍の差があるので、「片方で見えて、片方で見えない」は、フィルタリング以前に受信網の問題であることもあるという点は頭に置いておきたいところです。

で、どちらを使うか #

用途で切り分けると、こうなると思います。

やりたいこと向いているほう
便名・出発地・到着地・遅延を調べるFlightradar24
空港の発着履歴を見るFlightradar24(Silver以上)
スマホで手軽に、日本語でFlightradar24
「映らない機体」が本当に飛んでいるか確かめるADS-B Exchange
IAS・TAS・風・OATを無料で見るADS-B Exchange
QNH・選択高度・バンク角まで見るADS-B Exchange
その位置がADS-BかMLATかを確かめるADS-B Exchange
2020年以降の経路を無料で遡るADS-B Exchange
3年分の履歴/商用利用Flightradar24 Business
個人で何か作る(API)ADS-B Exchange

両方入れておけばいい、というのが現実的な答えだと思います。どちらも無料で始められますし、片方で見えないものを片方で確かめる、という使い方が一番効きます。

ただ、パイロットが「教材」として見るなら、ADS-B Exchangeのほうが得るものは多いと感じています。IASとTASとGSが同時に並び、機首方位と対地針路の差がそのまま偏流として読め、精度指標まで数字で出る。教科書で習った量が、実機の値として同時に表示されるという体験は、他ではなかなかできません。

まとめ #

  • Flightradar24は受信機50,000台以上+衛星ADS-B・レーダー(北米豪州)・FLARM・UAT・ADS-Cまで取り込む。150万機超のデータベースで便名・路線と突き合わせる。
  • ADS-B Exchangeは受信機25,000台以上、500ミリ秒更新。受信したものを、受信したまま出す。位置の取得元(ADS-B/MLAT/TIS-B等)を機体ごとに明示。
  • Flightradar24には機体の非表示がある(FAA LADD/運航者の申請)。ADS-B Exchangeは「検閲やフィルタリングなし」を掲げる。2023年1月のJETNET買収後も、この方針は維持されている。
  • 料金は、FR24が年額Silver $14.99/Gold $34.99/Business $499.99。商用利用はBusinessのみ。無料版は30分でタイムアウトし、履歴は7日。
  • ADS-B Exchangeは$29.95/年で広告非表示+地図レイヤーのみ。有料にしても見える情報は増えない。
  • 最大の差はここ。IAS/TAS/Mach/GPS高度/風/OATは、FR24ではGold(年34.99ドル)以上、ADS-B Exchangeでは無料。
  • さらにADS-B Exchangeは、QNH・FMS選択高度/選択方位・真方位/磁方位・バンク角・NACp/SILまで無料表示。FR24の公開機能説明にこれらは出てこない。
  • ただし機体が放送していなければ、どちらでも出ない。MLATや推定位置ではExtended Mode Sは得られない。
  • 履歴は、無料ならADS-B Exchange(2020年3月以降)、商用グレードならFR24(Business 3年、APIは2016年5月11日以降)。
  • APIは、個人ならADS-B Exchangeの$10/月・10,000リクエスト。FR24のAPIはどのプランにも含まれず別売。
  • 受信機を立てると、FR24はBusinessプランが無料、ADS-B Exchangeは広告非表示が無料。受信機は同時に複数サービスへ送れる。
  • 日本で使うなら、日本語UIと便名照合はFR24一択。ADS-B Out非装備機はどちらにも映らないので、山間部・低高度では両方消えることに注意。

【2026年9月22日 追記】3つめの選択肢——FlightAware #

この2つとは別に、FlightAwareがあります。同じADS-Bを使っていますが、性格はさらに違いました。

  • 27言語に日本語がある(ADS-B Exchangeは英語のみ)
  • ゲート出発・離陸・着陸・ゲート到着の4つの時刻まで出る。これは2社ともやっていない
  • ただし機体登録番号はEnterprise(月99.95ドル)扱いで、無料では出ない
  • 日本は「二次サービスエリア」。定期便は出るが、日本のヘリコプターはブロックされているものが多い

→ FlightAwareの使い方——ADS-B Exchangeが「機体」を見る道具なら、こちらは「便」を見る道具


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本記事の価格・機能は2026年9月14日時点で各社が公開している情報に基づきます。プラン内容や価格は予告なく変更されることがあります(Flightradar24自身も「事前告知なく変更する権利を留保する」と明記しています)。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。価格はいずれも米ドル・税別です。

ヒーロー画像はイメージです(自作の1090MHz ADS-Bダイポールアンテナ)。両サービスとも、こうしたアンテナを立てた世界中の個人・組織からのデータで成り立っています。“Homemade 1090 MHz ADS-B dipole antenna” by Happy-marmotte / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0(本記事への掲載にあたりリサイズを行いました)


出典

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