FlightAwareの使い方——ADS-B Exchangeが「機体」を見る道具なら、こちらは「便」を見る道具
「ADS-B Exchangeのようなサイトを見つけた」という形でFlightAwareを教えてもらいました。
たしかに同じADS-Bを見ています。ただ、実際に触ってみると設計思想がかなり違うことが分かりました。ひとことで言うとこうです。
ADS-B Exchangeは「機体」を見る道具。FlightAwareは「便」を見る道具。
ADS-B Exchangeが得意なのは、IASや選択高度や風といったその機体が今どう飛んでいるかです。FlightAwareが得意なのは、ゲートを出た時刻・車輪が浮いた時刻・接地した時刻・ゲートに着いた時刻というその便がどう運ばれたかのほうでした。
以下、実際に操作しながら整理します。ログインなしでどこまでできるかを基準にしました。
まず、日本語にする #
FlightAwareは27言語に対応していて、日本語があります。ここは英語しかないADS-B Exchangeとの大きな違いです。
画面右上(または最下部)の言語メニューから「日本語」を選ぶか、最初から ja.flightaware.com を開けば日本語になります。
ただし、日本語にすると失うものもあります。これは後半で詳しく書きますが、先に結論だけ言っておきます。
日本語表示にすると、高度がメートル、速度がkm/hになり、追跡ログの列が1つ消えます。
読み物として使うなら日本語、データとして読むなら English (USA) ——という使い分けになります。
5つの入口 #
検索ボックスの左にあるプルダウンが、そのまま入口の種類です。「すべて/ルート/航空会社のフライト/プライベート便(機体登録番号)/空港」の5つ。
URLの形を覚えてしまうほうが速いので、並べておきます。
たとえば羽田を見たいなら ja.flightaware.com/live/airport/RJTT を直接開きます。ICAOコード(RJTT)でもIATAコード(HND)でも通ります。
空港ページは4つのブロックに分かれていて、これがよくできています。
| ブロック | 中身 |
|---|---|
| 到着 | もう着いた便 |
| 出発 | もう出た便 |
| 飛行中/到着予定 | 今こちらに向かっている便 |
| 出発予定 | これから出る便 |
羽田を開いた時点で、到着20件・出発20件がそれぞれJST表記で並びます。時刻は自動で現地時間に直されるので、ここは楽です。
フライトページで何が見えるか #
便名で開いたページが、FlightAwareの本体です。JAL905(羽田→那覇)を例にすると、こう出ました。
| 項目 | 表示 |
|---|---|
| ゲート出発 | 08時06分 JST(予定 08時05分) |
| 離陸 | 08時22分 JST(予定 08時15分) |
| 地上走行時間 | 16分 |
| 着陸 | 10時36分 JST(予定 10時29分) |
| ゲート到着 | 10時40分 JST(予定 10時40分) |
| 地上走行時間 | 4分 |
| 平均遅延 | 10-20分 |
この4つの時刻が、FlightAwareのいちばんの持ち味です。
ADS-B Exchangeにこれはありません。ADS-Bは「今どこにいるか」しか送っていないので、ゲートを離れた時刻は航空会社側のデータがないと分からない。FlightAwareは50を超える政府系の航空管制機関と、航空会社からのデータを取り込んでいるので、ここが埋まります。
ついでに使える導線が3つあります。
- 追跡ログを表示する——後述。ここが本命
- インバウンド便を追跡する——この便に使う機材が、今どこから飛んできているか
- HND-OKA間のすべての便——同じ区間の他社便が一覧で出る
さらに下にスクロールすると、過去の便が2週間分並びます。「いつもは何分遅れているのか」を見るには十分です。
ただし、機体登録番号は出ない #
同じページの「航空機情報」には、こう書いてありました。
登録番号 アカウントをアップグレードして機体番号を見る
ここがFlightAwareの、いちばん驚いた点です。料金表を確認すると、「表示されている機体登録番号」はEnterprise以上の機能でした。
| Basic | Premium + | Enterprise | Enterprise WX | |
|---|---|---|---|---|
| 料金 | 無料 | $44.95/月 | $99.95/月 | $149.95/月 |
| 機体登録番号 | — | — | ✓ | ✓ |
| ATCコールサイン | — | — | ✓ | ✓ |
| 過去のフライト履歴 | 3か月 | 5か月 | 8か月 | 8か月 |
| 保存できる航空機 | 5 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
| 広告なしの地図 | — | — | ✓ | ✓ |
| 航空チャート | — | ✓ | ✓ | ✓ |
年額ではなく月額です。Flightradar24とADS-B Exchangeを比べた記事では、Flightradar24のGoldが年34.99ドル、ADS-B Exchangeの広告非表示が年29.95ドルでした。桁がひとつ違います。
FlightAwareは個人の趣味ユーザーではなく、運航会社やFBOを本来の客にしている——料金表はそう言っています。
受信機を立てると、Enterpriseが無料になる #
ただし、抜け道と言っていいものが公式に用意されています。ADS-Bのページにこう書いてありました。
FlightAwareでデータを共有してくださっているユーザーは自動的にエンタープライズアカウントへの無料アップグレード条件を満たします。
Raspberry PiにUSBのADS-B受信機を挿してPiAwareを動かし、データをFlightAwareに送る。それだけで、月99.95ドルのプランが無料になるという設計です。費用は「100米ドル/80ユーロ以下」と書かれています。
つまりFlightAwareの有料プランは、お金で買うか、受信機で払うかの二択になっています。これはこれで筋が通っていると思いました。
2026年9月22日時点の同社の受信網は、こう表示されていました。
- 45,362 サイト
- 38,631 人の参加者
- 197 か国
- 330,802,484 位置/時間
Flightradar24が5万台超、ADS-B Exchangeが2.5万台超でしたから、ちょうど中間です。
追跡ログの読み方——ここが本命 #
フライトページの「追跡ログを表示する」を押すと、位置の生データが全部出ます。無料で、ログインも不要です。
列はこうなっています。
時間/緯度/経度/進路/ノット/km/h/メートル/レート
神戸→羽田のANA412(A321)で、実際に出た行を引きます。
月 18時28分:24 34.6224 135.1830 ↙ 235° 173 320 518 614
月 18時46分:30 34.8488 136.6807 → 95° 482 893 8,237 76
月 19時23分:23 35.5427 139.7813 ↖ 329° 105 195 53 -86
離陸直後・巡航・接地直前です。1本の便で135行ありました。
つまずくのはここ #
ページ上部に、しれっとこう書いてあります。
All times are in EDT time to prevent confusion due to time zone crossing.
時刻がすべて米国東部時間(EDT)です。フライトページはJSTで表示されるのに、追跡ログだけEDTに切り替わります。時差13時間。「18時28分」は日本時間の翌朝7時28分です。
各行の右端にJSTが併記される場面もありますが、表の時刻そのものはEDTなので、ここは意識しておかないと必ず混乱します。FlightAwareの説明では、無料アカウントを作れば自分のタイムゾーンを設定できるとのことでした。
言語を変えると、列が1つ増える #
ここが今回いちばんの発見でした。同じ追跡ログを English (USA) で開き直すと、表示が変わります。
高度がフィートになるのは想像がつきます。問題は最後の行です。
日本語表示には存在しない列が、英語表示では出てきます。Reporting Facility——その位置をどの受信機が拾ったかです。
Mon 06:46:00 PM ... 26,750 1,075 FlightAware ADS-B (ITM / RJOO)
Mon 06:47:00 PM ... 27,000 -25 FlightAware ADS-B (RJTS)
Mon 06:48:30 PM ... 27,000 FlightAware ADS-B (NGO / RJGG)
ついでに、メートル表示では気づけないこともあります。巡航に入りきったあたりの高度は、日本語表示だと「8,230メートル」と出ます。英語にすると27,000 feet。FL270のきれいな数字だったわけです。メートルに丸められると、高度指示との対応が読めなくなります。
受信機の分布が見える #
この便(神戸→羽田、約1時間)の135行に出てきた受信施設を拾うと、26か所ありました。
RJOY・RJOO・RJBB・RJBE・RJOS・RJBD・RJOT・RJNA・RJGG・RJTS・RJNH・RJNG・RJNS・RJTT・RJTF・RJAA・RJTY・RJTC・RJTI・RJTJ・RJTA・RJTK・RJTO・RJAH・RJTL・RJTR
阪神から東海、そして関東へ——飛行に沿って受信機が入れ替わっていく様子がそのまま見えます。
ただし読み方には注意が必要です。この括弧内は「その空港に受信機がある」という意味ではありません。FlightAwareは受信機の位置を「最寄りの場所」でしか表示しない方針を明記していて、統計ページにもこうあります。
セキュリティおよびプライバシー保護の理由から、正確な位置は表示しておりません。
つまり (RJTI) は「東京ヘリポートに受信機がある」ではなく、「東京ヘリポートがいちばん近い場所にある誰かの受信機」です。横田・立川・入間・厚木・木更津・下総といった飛行場のコードが並んでいますが、基地の設備ではなく、近所の個人宅である可能性のほうが高いと考えるのが自然です。
ライブマップ #
/live/map を開くと世界地図が出ます。ただし、最初は必ず米国が中心で開きます。日本まで自分でドラッグするか、素直に空港ページから入るほうが速いです。
地図の左下にフィルタが4つあります。
| フィルタ | 中身 |
|---|---|
| 高度 | 0〜20,000(日本語表示だとメートル) |
| 速度 | km/h |
| フライトタイプ | 一般航空/ビジネス航空/商業航空/貨物航空会社/MEDEVAC |
| 機種 | ICAOの型式コードから選択(EC-175やAW189など回転翼もある) |
MEDEVACだけを残せるのは、この手のサイトでは珍しい部類です。ドクターヘリや救急搬送の動きを見たい人には効きます。
なお、引いた縮尺では「6069 flights decluttered (zoom in to see more)」と出て、機体が間引かれます。全部見たければズームインが必要です。
日本では、何がどこまで映るのか #
ここからが正直な話です。FlightAwareにとって、日本は「二次サービスエリア」です。同社のFAQに、はっきりそう書いてあります。
FlightAware’s primary service area includes airspace operated by the United States (including Alaska, Hawaii, Puerto Rico, and Guam), portions of Central America, Canada, Australia, and New Zealand.
FlightAware’s secondary service covers scheduled major airline operations at any airport in the world.
羽田の空港ページにも、そのまま出ます。
This airport is in FlightAware’s secondary service area.
二次エリアで保証されているのは定期便の出発・到着情報までです。リアルタイムの位置は「ADS-Bのカバー範囲にいれば出るかもしれない」という扱いになります。
実際に試してみた #
2026年9月22日の朝8時台、東京周辺(半径150海里)でADS-Bを出しているJA登録のヘリコプターが6機いました。公開されているADS-Bの生フィードで確認した数字です。この6機をFlightAwareで1機ずつ引いてみました。
| 結果 | 機数 |
|---|---|
| 飛行中と表示された(Position-Only Flight) | 2機 |
| 追跡データが見つからない | 1機 |
| ブロックされていた | 3機 |
ブロックされていた機体は、こう表示されます。
この航空機は、所有者/運航者の要望により、公共における追跡ができません。
同じ瞬間に、ADS-B Exchange側では高度も速度もそのまま出ていました。以前の記事で書いた「フィルタするかどうか」の違いが、日本のヘリコプターでそのまま再現されたことになります。
なお、なぜブロックされているのかは外からは分かりません。本当に運航者が申請したのか、それとも既定でそうなっているのかは、この画面からは判別できませんでした。ここは「そう表示された」以上のことは書けません。
「Position-Only Flight」という表示 #
映った2機には、Position-Only Flightという札がついていました。FAQの定義はこうです。
A position-only flight is a flight for which FlightAware has not received a filed flight plan (for example an airline flight that doesn’t report its flight schedule to FlightAware or a VFR flight).
飛行計画が届いていない飛行、という意味です。出発地も目的地も表示されず、代わりに「○○付近」と最寄りの地名が出ます。日本のVFRのヘリコプターは、ほぼ全部これになります。
逆に言えば、ADS-Bさえ出していれば、飛行計画がなくても位置は出るということでもあります。
機種で引くと、もっとはっきりする #
/live/aircrafttype/EC45 で、いま飛んでいるEC145/BK117 C-2を一覧できます。日本が真っ昼間の時間帯に開いた結果がこれでした。
- 表示された機体は全機がN登録(米国)
- 出発地は
Indiana University Health West HospitalWayne Countyなど、米国のHEMS基地ばかり /live/aircrafttype/BK17は 「該当便なし」
米国のドクターヘリの動きを眺める用途なら、FlightAwareは相当に強い。日本のヘリコプターを追う用途には、そもそも向いていない。画面がそう言っています。
結局、どう使い分けるか #
3つのサイトを並べるとこうなります。
| 見たいもの | 向いているサイト |
|---|---|
| 定期便の遅れ・機材繰り・ゲート時刻 | FlightAware |
| 米国のヘリコプター・GA | FlightAware |
| 日本のヘリコプター・自衛隊機・要人機 | ADS-B Exchange |
| IAS・TAS・風・外気温・選択高度 | ADS-B Exchange |
| とりあえずきれいな地図で眺めたい | Flightradar24 |
| 位置の生データを行で読みたい | FlightAware(追跡ログ) |
FlightAwareを「ADS-B Exchangeの代わり」として開くと、たぶん物足りません。登録番号が有料で、日本のヘリはブロックされ、地図は米国で開く——そこだけ見れば、日本のパイロットには向いていないサイトに見えます。
ただ、追跡ログだけは別格でした。1便あたり135行の位置・速度・高度・上昇率が、ログインなしで、CSVに貼れる形で出てきます。しかもどの受信機が拾ったかまで付いてくる。これはADS-B Exchangeの無料版にはない機能です。
自分の乗った便の降下プロファイルを後から確かめる、といった使い方なら、English (USA) に切り替えたFlightAwareが、いちばん手っ取り早いと思います。
関連記事 #
- ADS-B Exchangeの使い方
- Flightradar24で年35ドルの機能が、ADS-B Exchangeでは無料
- Flightradar24はなぜ機体を映せるのか——ADS-BとMLATの仕組み
- ADS-Bとは何か
出典 #
- FlightAware「よくある質問と回答」(サービスエリア、position-only flight、VFRの扱い、データ遅延)
- FlightAware「FlightAwareサブスクリプションの選択」(料金・機能比較)
- FlightAware「ADS-Bフライト追跡」および「FlightAware ADS-Bの統計」(受信網の規模、フィード提供者への無料アップグレード、受信機位置の非開示方針)
- 各画面は2026年9月22日に筆者が実際に開いて確認
ヒーロー画像:「Departures Board, Tokyo Haneda Airport (HND)」by Charles from Port Chester, New York(Wikimedia Commons / CC BY 2.0)。本記事への掲載にあたり、切り抜きとリサイズを行いました。
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