IFRでGPSを使う基準(5-005)——RAIMが5分途切れると予測されたら、飛行を中止する

IFRでGPSを使う基準(5-005)——RAIMが5分途切れると予測されたら、飛行を中止する

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前々回はVFRでGPSを使う基準(サーキュラー5-006)、前回はTSO-C146そのものを扱いました。今回は残るもう一方、GPSを計器飛行方式に使用する運航の実施基準(サーキュラー No.5-005)を通しで読みます。

VFR側が全4ページ・5章だったのに対し、こちらは全10ページ・11章。平成9年11月25日に制定され、その後10回の一部改正を経て、現行版は令和7年3月13日最終改正(国空安政第2879号)・同日から適用されています。

ひとつ注意点があります。国交省の「報道・広報」配下に置かれた通達PDFはその日付時点のスナップショットで、更新されません。現行の条文は航空安全情報管理・提供システム(ASIMS)のサーキュラー情報管理にあるものが正となります。本記事はASIMSの現行版(令和7年3月13日最終改正)に基づいて書いています。

同じGPSでも、IFRに使う瞬間に何が求められるようになるのか。条文の順に追っていきます。

この基準は何を決めているのか #

目的(1-1)は、次のように書かれています。

本実施基準は、航空機が計器飛行方式にGPSを使用して運航する場合に衛星航法装置に求められる要件、使用方法の基準等を定めることを目的とする。

装置に求められる要件と、その使い方。この2本立てが、そのまま11章の構造になっています。

内容
第1章総則(目的・定義・GPSの位置付け・使用できない範囲)
第2章一般要件(装置要件/運航要件)
第3章洋上及び遠隔地域
第4章エンルート及びターミナル空域
第5章計器進入方式
第6章航法用データベース
第7章飛行規程
第8章運航規程及び整備規程(本邦航空運送事業者に限る)
第9章航空機乗組員に対する教育訓練
第10章外国籍航空機
第11章雑則

土台は第2章です。第3〜5章は「洋上か、エンルートか、進入か」という飛行の局面ごとに、第2章の上へ要件を積み上げていく形になっています。

出発点にある、2つの条文 #

読み進める前に押さえておきたい条文が2つあります。

まず1-3、GPSの航法上の位置付け。

GPSは、単独で航法に使用するために必要なレベルの性能要件を完全には充足していないため、必要に応じ補強することが求められる。

前回のTSO-C146の記事で扱ったSBASの必要性が、日本の通達の側からもこう書かれているわけです。この一文が、以降の全ての章で「補強を受けるか、受けないか」という分岐を生みます。

そしてもう一つが1-4、GPSを航法に使用できない飛行の範囲

精密進入による計器進入方式においては、GPSを航法に使用できないものとする。ただし初期進入、中間進入又は進入復行セグメントにおいて衛星航法装置を使用して飛行することが認められている場合における当該セグメントの衛星航法装置を使用した飛行及びGLSを使用したカテゴリーI航行を除く。

整理すると、こうなります。

  • ILSのファイナルをGPSで置き換えることはできない
  • ただし、そのILSに乗るまでの初期進入・中間進入・進入復行のセグメントはGPSでよい
  • GBASによるGLSのCAT Iは例外として認められる

ここで当然の疑問が出ます。LPVはGPSを使って計器進入しているのに、この禁止に引っかからないのか。結論から言うと引っかかりません。理由は後半にまとめて書きます(LPVは1-4の禁止に触れないのか)。

言葉の定義(1-2) #

条文を読むうえで効いてくる用語が、第1章に13個並んでいます。主なものを挙げます。

用語定義(要旨)
独立型衛星航法装置他の航法センサーや航法装置と結合されないで使用されるGPS機上装置(SBAS又はGBASによる補強を受けるものを含む)
マルチセンサー装置複数の航法センサーを有する統合型航法装置
衛星航法装置上記2つの総称(マルチセンサーは少なくとも1つがGPSであるもの)
単独進入既存の航空保安無線施設によらず、衛星航法装置の単独使用を前提として設定された進入方式に従い計器進入を行うこと
RAIM衛星航法装置がGPS航法信号の完全性を自ら監視及び判断する機能
RAIM予測機能RAIMが、意図した時刻・場所において利用可能かどうかを事前に予測する機能
FDE誤った衛星信号の存在を探知し、それを測位計算から排除できる機能
遠隔地域見通し通信・独立した監視体制・航空保安無線施設による支援の全てが利用できないとされる陸上の空域等
GLSGBASを用いた計器着陸装置

RAIMとRAIM予測が別々に定義されているのがポイントです。飛んでいる最中に監視する機能と、飛ぶ前に「その時刻・その場所で使えるか」を予測する機能。後で見るように、この基準は予測のほうに具体的な数字を置いています

第2章 一般要件——全ての土台 #

装置要件(2-1) #

TSOに適合するもの、または航空法施行規則第14条第1項の承認を取得したものであって、FAAのAC 20-138(マルチセンサーはAC 20-130A若しくはAC 20-138A)に従って装備されたもの、もしくはこれらと同等と認められるもの。

区分認められる技術基準
独立型① TSO-C129a クラスA ② TSO-C129 クラスA+C129aのa-(3)-(xv)-5項・a-(6)項 ③ TSO-C146 クラスGamma+クラス1、2又は3
マルチセンサー① TSO-C129/C129a クラスB又はC ② TSO-C196 ③ TSO-C145 クラスBeta+クラス1、2又は3

前回整理したC145とC146の役割分担が、そのまま条文になっています。単体で航法を完結させるC146のGammaは「独立型」の欄に、センサーに徹するC145のBetaは「マルチセンサー」の欄に置かれている。

そして気づくことがあります。C146のクラス4(Functional Class Delta、いわゆるILS look-alike)は、どこにも挙がっていません。Deltaは自前で航法機能を持たず、ILSの表示装置に見せかけて偏位を出す構成なので、「独立型衛星航法装置」として成立しない——そう読むのが自然です。

運航要件(2-2) #

わずか2項ですが、どちらも重要です。

衛星航法装置は、飛行規程の限界事項に従って運用すること。また、同装置の運用許容基準を設定する場合は、適切に設定されていること。

VFR側の5-006と同じ考え方です。装置が何に適合しているかではなく、その機体の飛行規程が何を許しているかが現場の答えになる。

もう一つが、意外に見落とされやすい条文です。

衛星航法装置により得られる垂直面の位置情報は、水平面の位置情報と比較して算定精度が低いため、これを高度情報として使用しないこと。ただしGLSを使用してカテゴリーI航行を行う際、衛星航法装置により得られる垂直面の位置情報を、進入角からの偏位表示に使用する場合、又はSBASによる補強を受けた衛星航法装置により得られる垂直面の位置情報を、進入角からの偏位表示に使用する場合を除く。

GPSの高度を、高度計の代わりにしてはならない。明文で書かれています。

そして除外されるのは「進入角からの偏位表示に使う場合」だけです。GLSに加えてSBAS補強の場合が並んでいるのがポイントで、これがLPVの垂直誘導を支えています。この一文は平成30年版には存在せず、現行版で追加されたものです(後述)。

第3章 洋上及び遠隔地域 #

独立型の装置要件は第2章と同じ。マルチセンサーはクラスB1、B2、C1、C2+FAA Notice 8110.60、TSO-C196、TSO-C145 Beta+クラス1/2/3。

運航面の上乗せは1項だけですが、性格がはっきりしています。

衛星航法装置を単独で航法に使用する場合にあっては、承認されたFDE利用可能性予測プログラムを飛行前に使用すること

洋上や遠隔地域には、代わりに頼れる地上施設がありません。だからRAIM(異常を検知する)より一段強いFDE(異常を排除して航法を継続する)の可用性を、飛ぶ前に予測しておけ、という要求になります。

第4章 エンルート及びターミナル空域 #

装置要件は第2章と同じ。運航要件がSBAS補強の有無で二分されます。

SBASによる補強を受ける場合 #

第2-2項に掲げるいずれの要件にも適合していること。

それだけです。

SBASによる補強を受けない場合 #

一転して、3つの要件が積み上がります。

① 第2-2項に適合していること。

② 逃げ道を、飛行前に確認しておくこと。

飛行中にGPSによる位置等の情報に疑義が生じた場合に、GPSに依存しない航法(航空保安無線施設、慣性航法装置又は精密ドプラーレーダー装置を使用した航法)などにより目的地又は代替空港等までの経路を航行し着陸することが可能であることを飛行前に確認すること。

しかも確認は形式的なものでは足りません。その経路に必要な航法装置が装備され使用可能であること、そして関連する航空保安無線施設が運用されていることまで確かめる、と書かれています。

③ RAIMが落ちたら、監視に切り替えること。

独立型衛星航法装置にあっては、RAIM機能又はこれと同等な機能により完全性の監視が行われている場合に限り、独立型衛星航法装置以外の航法装置の監視は行わなくてもよい。RAIM機能又はこれと同等な機能が喪失した場合には、独立型衛星航法装置以外の航法装置を常時監視することにより、自機の位置のクロスチェックを行い、航法性能が許容できるレベルにあることを確認しなければならない。それができない場合又はRAIM警報が発出された場合には、管制機関に連絡し、GPSに依存しない航法による経路に移行しなければならない。

「他の装置を見なくていい」のは、RAIMが効いている間だけ。この条件付きの書き方が正確です。RAIMを失えば常時監視に戻り、それも無理なら管制に言って別の経路に移る。逃げる手順まで条文に書いてあるわけです。

NDB経路を衛星航法装置で代替する場合 #

従来型の経路のうち、NDB経路を方向探知機の代わりに衛星航法装置で飛ぶ場合は、機体側にRNAV航行の許可が必要になります。

  • エンルート:RNAV航行許可基準の附属書2 RNAV 5/附属書3 RNAV 1/2/附属書5 RNP APCH/附属書7 Basic RNP 1/附属書8 RNP AR APCH/附属書9 RNP 2/附属書10 LP/LPVいずれか1つ以上
  • ターミナル附属書5 RNP APCH/附属書8 RNP AR APCH/附属書10 LP/LPVいずれか1つ以上(範囲が絞られる)

飛行規程等、設計国の耐空性当局が認める文書により同等の能力があると確認できるものでも可、とされています。これに加えて、前述の②③の要件も満たすこと。

その他の従来型経路 #

VOR経路等をGPSで飛ぶ場合(NDBの代替に当たらない場合)は、その経路に必要な航空保安無線施設が運用されており、GPS以外の航法装置が使用可能であることを飛行前に確認。そして、

SBASによる補強を受けない独立型衛星航法装置を使用する場合には、航空機乗組員は当該経路を飛行するために必要となる、独立型衛星航法装置以外の航法装置を常時監視すること。

ここは条件なしの常時監視です。従来型の経路をGPSで飛ぶなら、その経路本来の航法装置から目を離すな、ということになります。

第5章 計器進入方式——要件がもう一段上がる #

装置要件が第2章より厳しくなる #

同じTSOでも、クラス番号が絞られます。

区分第2章(一般)第3章(洋上・遠隔)第5章(進入)
独立型(C129系)クラスAクラスAクラスA1
マルチセンサー(C129系)クラスB又はCB1、B2、C1、C2+Notice 8110.60B1、B3、C1、C3
C146(独立型)Gamma+クラス1、2、3Gamma+クラス1、2、3Gamma+クラス1、2、3
C145(マルチセンサー)Beta+クラス1、2、3Beta+クラス1、2、3Beta+クラス1、2、3
C196(マルチセンサー)

洋上で認められるB2/C2は進入には使えず、進入で認められるB3/C3は洋上には使えない。クラス番号が用途を切り分けているのが、この表を並べるとはっきり見えます。

GLSでカテゴリーI航行を行う場合は、上記に加えてTSO-C161+TSO-C162(またはC161a+C162a)に適合し、AC 20-138Aに従って装備されていること、という別枠の要件が乗ります。

運航要件——ここでも補強の有無で分かれる #

SBAS又はGBASの補強を受けて単独進入する場合は3項目。

  1. 第2-2項に適合していること
  2. GPSを使用した計器進入方式がWGS-84座標系に基づいていること
  3. 飛行計画の作成段階でSBAS又はGBAS信号の利用可能性についてNOTAMを確認し、到着予定時間での目的地において当該信号が利用できない場合は、補強を受けない衛星航法装置と同様の手順に従うこと

3番目が実務的です。補強がある前提で計画しても、NOTAMで落ちていると分かれば、その瞬間から「補強なし」のルールに移る。

補強を受けずに単独進入する場合は、8項目に増えます。

  1. 第2-2項に適合していること
  2. WGS-84座標系に基づいていること
  3. RAIM機能又はこれと同等な機能が使用可能であること
  4. 飛行計画の作成段階において、RAIM予測機能若しくはこれと同等な予測機能又はNOTAM等により、到着予定時間での目的地においてRAIM機能又はこれと同等な機能(当該機能により監視及び判断するGPS航法信号の完全性を含む)が5分を超えて継続して失われることが予測される場合には、次のいずれかの処置を行うこと
    • (1) GPSを利用した進入方式以外の進入方式の実施を計画する
    • (2) 当該飛行に係る到着予定時間を変更する
    • (3) 当該飛行を中止する
  5. (代替空港等が必要な場合)目的地又は代替空港等においてGPSを利用した進入方式以外の計器進入方式を実施可能であること
  6. (代替空港等が必要でない場合)目的地においてGPSを利用した進入方式以外の計器進入方式を実施可能であること
  7. 出発地に対する代替空港等が必要な場合には、当該代替空港等においてもGPS以外の計器進入方式が実施可能であること
  8. ETOPS代替空港が必要な場合には、①予想緊急着陸時刻におけるRAIMの利用可能性を飛行計画作成段階と飛行中に確認する(一時的に失われる予測なら、失われる時間を加えても運航規程の最大飛行時間内であること、その分の燃料を搭載すること、乗組員へ周知することが必要。継続的に失われる予測なら本項は適用できない)か、②当該ETOPS代替空港でGPS以外の計器進入方式が実施可能であること

「5分」という具体的な数字と、「当該飛行を中止する」という選択肢。この2つが並んで書かれているのが、5-005でいちばん重い部分だと思います。

そして5〜8項が言っているのは、要するにこういうことです。補強なしでGPSの進入を計画するなら、GPS以外で降りられる場所を必ず確保しておけ。GPSだけで完結する運航は、この基準では想定されていません。

なお8項目めのETOPSは、現行版で新設された項です。ヘリの運航に直接は関わりませんが、「RAIMが一時的に落ちる予測なら、その時間ぶんの燃料を積んで乗組員に周知する」という書きぶりは、この通達の一貫した思想——使えなくなる前提で組む——がよく出ています。

ILS等のセグメントで使う場合 #

精密進入・ローカライザー進入の初期進入、中間進入又は進入復行セグメントをGPSで飛ぶ場合は、

  • そのセグメントがRNAV仕様又はRNP仕様で構成されている → 補強ありなら5-2-1、補強なしなら5-2-2を準用
  • そのセグメントがNDBで構成され、方向探知機の代わりに使う → 機体にRNP APCH/RNP AR APCH/LP/LPVのいずれかの許可が必要。加えて、補強ありならNOTAM確認等+「GPS以外の進入方式が実施可能」の要件、補強なしなら5-2-2を準用

ILSに乗るまでの部分をGPSに任せるだけでも、これだけの条件が付く。1-4の「精密進入ではGPSを使えない」という原則の、実務的な裏側にあたる部分です。

LPVは1-4の禁止に触れないのか #

「精密進入ではGPSを航法に使用できない」(1-4)と書いてあるのに、LPVはGPSで進入している。矛盾しないのか——条文と関係する通達を突き合わせると、矛盾しません。根拠は3つあります。

① 日本の制度上、LPVは「精密進入」ではなくRNP APCHとして許可されている #

RNAV航行の許可基準及び審査要領(サーキュラー5-017、令和6年3月29日最終改正)に、附属書10「LP/LPV航行に関する運航基準」が置かれています。その冒頭にこう書かれています。

LP又はLPVのミニマまで降下するRNP APCH航行の許可を受けるためには、以下の対応が必要となる。

「LPVのミニマまで降下するRNP APCH航行」。LPVはRNP APCHという枠組みの中の、より低いミニマとして位置づけられています。1-4が禁じている「精密進入による計器進入方式」——ILSやMLS、そしてGLS——とは、そもそも別の区分です。

ICAOの整理でも、LPVは垂直誘導付き進入(APV)であって精密進入ではありません。附属書10も、訓練内容として「LP又はLPV進入方式の定義とRNAV(GNSS)方式との直接的関係」「ILSに類似した原理」を挙げています。ILSに似せてあるが、ILSではない。この整理が制度の側にも通っています。

② 5-005自身が、SBAS補強による単独進入を正面から認めている #

第5章5-2-1は「SBAS又はGBASによる補強を受ける衛星航法装置を使用して単独進入を行う場合」の要件を定めています。1-4がSBASの進入まで禁じているなら、この項が丸ごと空振りになる。同じ通達の中で、5-2-1が成り立つように1-4を読むのが筋です。

つまり1-4の「精密進入」は、ILS等の精密進入の最終進入をGPSに置き換えることの禁止であって、GPS/SBASを前提に設計された進入方式(RNAV(GNSS)のLPVミニマ)を禁じたものではありません。

③ 垂直誘導についても、現行版で明示的に手当てされている #

残る論点が、2-2-2の「垂直面の位置情報を高度情報として使用しないこと」でした。平成30年版では、その例外がGLSのCAT Iだけだったのです。LPVの垂直誘導も衛星由来なので、文言上は座りが悪い状態でした。

現行版では、ここに一句が加わっています。

……又はSBASによる補強を受けた衛星航法装置により得られる垂直面の位置情報を、進入角からの偏位表示に使用する場合を除く。

SBASの垂直誘導が、明文で例外に入りました。この追加は、平成30年3月30日版の後に行われた令和3年3月31日改正か令和7年3月13日改正のいずれかによるもので、どちらの改正で入ったかは今回確認できていません。ただ、あわせてRNAV航行許可基準の「附属書10 LP/LPV」への参照が3か所(4-2-3-1、4-2-3-2、5-2-4-1)に追加されていることから、LPVの実装に合わせた一連の整備であることは読み取れます。

日本初のLPVは前回書いたとおり2022年9月8日(HACの4空港)。制度側も、それに合わせて条文を整えていたということになります。

まとめると #

論点答え
LPVは1-4の「精密進入」かいいえ。5-017 附属書10でRNP APCH航行として許可される。ICAO区分でもAPV
GPSでの進入そのものは認められるのかはい。5-2-1が「SBAS又はGBASによる補強を受ける単独進入」の要件を定めている
垂直誘導は2-2-2に反しないか反しません。現行版でSBAS補強による進入角偏位表示が明文で例外化された
GLSとの関係はGLSは精密進入だが1-4のただし書きでCAT Iのみ許容。LPVはそもそも精密進入ではない、という別ルート

整理すると、GLSとLPVは「認められる理由」が違います。GLSは精密進入だが例外として名指しで許され、LPVは精密進入ではないので最初から禁止の対象外。同じ「GPSで垂直誘導をもらう進入」でも、制度上の入り口が別なのは面白いところです。

第6章 航法用データベース #

装置と運用だけでなく、データそのものに1章分が割かれています。

  • WGS-84座標系の位置情報によるものであること
  • AIP等の航空情報と照合し、有効かつ適切なものであること
  • 経路に対する無線施設及びウェイポイントを含んでいること
  • 収録されたデータを操縦者が変更できないよう保護されていること(ただし管制機関の承認に応じて、経路を選択した後に特定のウェイポイントを追加又は削除して経路を修正することは認められる)
  • ターミナル空域では、飛行するSID、トランジション及びSTARが航法用データベースから選択可能であること
  • 計器進入では、当該進入方式が航法用データベースから選択可能であり、かつ当該方式の名称によってロードされること
  • 進入経路に対する無線施設及びウェイポイントの位置情報が、公示された進入チャート上に記されている順番に従い表示されること

進入方式は名称でロードする。手打ちで組み立ててはいけない。明文でこう書かれているのは、ここだけ読む価値があります。ウェイポイントを一つずつ入れて同じ形を作ることは技術的には可能でも、それはこの基準の求めるものではない

第7章〜第11章 #

第7章(飛行規程)——第3-1項、第4-1項又は第5-1項の基準に適合する旨の記載に加え、次を必要に応じ定めること。

  1. 当該装置の性能に係る運用限界(限界事項)
  2. 非常操作手順
  3. 通常操作手順

VFR側(5-006)が限界事項と標識だけだったのに対し、IFRでは非常操作と通常操作の手順まで飛行規程に載ることになります。

第8章(運航規程及び整備規程)——本邦航空運送事業者に限る規定です。運航規程には概要及び装備数/運用の方法及び限界/操作及び点検の方法/緊急措置等、乗組員の要件、運用許容基準(MEL)、その他必要事項。整備規程には整備の方式、運用許容基準、その他必要事項。

第9章(教育訓練)——ここは、書きぶりが率直です。

ILS受信機やVOR受信機と異なり、衛星航法装置の基本的な使用方法、航法用表示装置上における受信表示方法及び衛星航法装置の機能は、それぞれの装置により大きく異なる。よって航空機乗組員は、機体に装備されている衛星航法装置、衛星航法装置の操作手順及び飛行規程に精通していなければならない。

内容は①装置の概要②装置を使った運航③装置を使用した進入手順④特別の操作が必要となる場合の操作方法(データベースの使用方法を含む)⑤本基準に基づく運航に必要な要件、の5項目。

そして注記に、実務的な逃げ道が用意されています。

注:上記の教育訓練の実施にあたっては、有視界飛行方式において衛星航法装置を使用すること、又はビルト・イン・シミュレーター・モードを有する衛星航法装置の場合は当該モードを利用することも認められる。

VFRでの使用が、IFR運航のための訓練として認められている。5-006が「補助的に使用し」と縛っているVFRでのGPS使用が、こちら側では訓練の場として位置づけられている——この対比は面白いところです。

第10章:外国籍の航空機は、本基準と同等の基準に基づく運航が、登録国又は運航国により認められていること

第11章(雑則):他の方法により同等の安全性が確保される場合には、航空局安全部長の承認を得て他の方法によることができる。

VFR(5-006)と並べてみる #

三部作の締めとして、両者を並べます。

5-005(IFR)5-006(VFR)
分量10ページ・11章4ページ・5章
目的の書きぶり装置に求められる要件、使用方法の基準GPSを補助的に使用する場合の基準
TSO未取得の装置道がない(TSO適合か、規則第14条第1項の承認)第3章の試験(0.124NM、24時間地上試験、5回のフライオーバー)で可
装置のクラス指定あり(A1、B1/B3/C1/C3等、用途別)なし
補強の有無による分岐章ごとに明示なし
航法用データベース1章分(第6章)規定なし
教育訓練義務(第9章)規定なし
飛行規程限界事項+非常操作手順+通常操作手順限界事項+「本GPS装置は有視界飛行方式での使用に限る」の標識
運航規程・整備規程本邦航空運送事業者は必須(第8章)規定なし

同じ装置でも、IFRに使う瞬間に要求が一段も二段も上がる。装置のクラス、データベースの完全性、乗組員の訓練、そして「使えないと分かったらどうするか」という手順まで、全部が揃って初めて成立します。

パイロットとして思うこと #

読み終えて、いちばん強く残ったのはこの基準が徹頭徹尾「使えなくなったとき」を書いていることでした。

洋上ではFDEの予測。エンルートではRAIM喪失時の常時監視と、管制への連絡と、GPSに依存しない経路への移行。進入では5分ルールと、GPS以外の計器進入方式の確保。GPSがどれだけ正確かではなく、GPSが使えなくなった瞬間に何が残っているかを、条文がひたすら問うている。

ここで思い出すのが、群馬県防災ヘリ「はるな」の事故報告書にあった一文です。

山岳地域を飛行する場合は(略)GPS装置に依存せず、有視界気象状態を維持して早期に引き返す判断をするよう機会あるごとに周知することが重要

あの一文はVFRの話でしたが、IFRの基準そのものが、同じ構えで書かれているわけです。計器飛行方式でGPSを正式に使うための通達が、その中身の大半を「依存しないための条件」に費やしている。依存を避けることは精神論ではなく、要件として書かれている——そう読み替えると、あの再発防止策の重みが少し変わって見えます。

もう一つ、前回のTSO-C146の話ともつながります。装置がC146に適合していることは、IFRで使える条件の一つでしかありません。この基準を通して見ると、必要なものは少なくとも4層あります。

何が求められるかどこに書かれているか
装置TSOへの適合とクラス(用途別に異なる)5-005 第2-1、3-1、4-1、5-1
機体飛行規程への記載(限界事項・非常操作・通常操作)、RNAV航行の許可5-005 第7章、RNAV航行許可基準
データWGS-84、AIPとの照合、保護、名称によるロード5-005 第6章
装置ごとの教育訓練5-005 第9章

カタログのTSO番号は、いちばん下の一層にすぎない。GTN 750を積めばIFRのGPS進入が飛べる、という話ではないことが、条文の並びからよく分かります。

ヘリの視点で付け加えるなら、第9章の注記——VFRでの使用を訓練として認めるという部分は、実務上ありがたい規定だと思います。日常のVFR運航でGPSを触っている時間は、そのまま慣熟の蓄積になる。ただし5-006が「補助的に使用し」と縛っている以上、VFRで身につくのは操作の慣れであって、IFRでの依存の仕方ではない。そこは分けて考えたいところです。

まとめ #

  • サーキュラーNo.5-005「GPSを計器飛行方式に使用する運航の実施基準」は全10ページ・11章。平成9年11月25日制定、10回の改正を経て現行版は令和7年3月13日最終改正(国空安政第2879号)・同日適用。国交省サイトの通達PDFは日付時点のスナップショットなので、現行条文はASIMSで確認する
  • 大前提は1-3の「GPSは単独で航法に使用するために必要なレベルの性能要件を完全には充足していない」。ここから全章が「補強を受けるか否か」で分岐する。
  • 1-4により精密進入ではGPSを航法に使用できない。例外は初期・中間・進入復行セグメントと、GLSによるCAT I
  • LPVは1-4の禁止に触れない。5-017の附属書10が「LP又はLPVのミニマまで降下するRNP APCH航行」として許可の枠組みを定めており、精密進入ではない。5-005自身も5-2-1でSBAS/GBAS補強による単独進入の要件を定めている。
  • 装置要件は独立型=C129aクラスA/C146 Gamma+クラス1-3マルチセンサー=C129/C129aクラスB・C/C196/C145 Beta+クラス1-3C146のクラス4(Delta)は挙がっていない
  • 運航要件の基本は2つ。飛行規程の限界事項に従うことと、GPSの垂直位置情報を高度情報として使用しないこと。ただしGLSのCAT ISBAS補強進入角からの偏位表示に使う場合は除かれる(SBASの例外は平成30年版にはなく、現行版で追加)。
  • 洋上・遠隔地域では、単独使用時に承認されたFDE利用可能性予測プログラムを飛行前に使用する。
  • エンルート・ターミナルでは、SBAS補強があれば2-2適合のみ。補強がなければ、GPSに依存しない航法での代替経路を飛行前に確認し、RAIM喪失時は他装置を常時監視、不可能又はRAIM警報時は管制に連絡してGPSに依存しない経路へ移行する。
  • 進入の装置要件はクラスが絞られる(C129系はA1、B1/B3/C1/C3)。洋上のB2/C2は進入不可、進入のB3/C3は洋上不可という関係。GLSのCAT IにはTSO-C161+C162が別途必要。
  • 補強なしの単独進入では、RAIMが5分を超えて継続して失われると予測される場合、①GPS以外の進入方式を計画②到着予定時間を変更③飛行を中止、のいずれかを行う。さらに目的地又は代替空港等でGPS以外の計器進入方式が実施可能であることが要件。現行版ではETOPS代替空港に関する項(5-2-2-8)が新設された。
  • 第6章は航法用データベース。WGS-84、AIPとの照合、操縦者が変更できない保護進入方式は名称によってロード、チャート記載の順番どおりの表示。
  • 飛行規程には限界事項・非常操作手順・通常操作手順。本邦航空運送事業者は運航規程・整備規程にも規定が必要
  • 第9章で教育訓練が義務。「ILS受信機やVOR受信機と異なり(略)それぞれの装置により大きく異なる」ため。訓練にはVFRでの使用やビルト・イン・シミュレーター・モードの利用も認められる
  • 5-006(VFR)と比べると、TSO未取得装置の道がない/クラス指定がある/データベースと訓練に規定がある点が決定的に違う。
  • 全体を通して、この基準が最も多く書いているのはGPSが使えなくなったときの手順「GPSに依存しない」は精神論ではなく要件として条文化されている。

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本記事は、国土交通省航空局安全部長サーキュラー No.5-005「GPSを計器飛行方式に使用する運航の実施基準」(令和7年3月13日最終改正)の条文に基づき、現役ヘリコプターパイロットの視点から整理したものです。実際の運航にあたっては、必ず原文および自社の運航規程・当該機の飛行規程をご確認ください。考察部分には筆者の私見を含みます。


出典

画像出典:Wikimedia Commons “AgustaWestland AW139 Instrument Panel” by Ahunt(CC0)。イメージ画像(IFR運航に対応する中型ヘリコプターの計器盤の例)。

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