技能発揮訓練、操縦士は何に気をつければいいのか——2026年9月時点でわかっていること

技能発揮訓練、操縦士は何に気をつければいいのか——2026年9月時点でわかっていること

技能発揮訓練については、これまで2本書きました。

その後、国土交通省の特設ページにFAQと登録訓練機関一覧が出そろい、操縦士が実際に何をすればいいのかがかなりはっきりしてきました。

今回は、制度の説明ではなく、操縦士側のチェックリストとして整理します。まず先に、以前の記事の誤りを訂正しておきます。

〔訂正〕2025年12月の記事で「令和7年12月1日に受講義務が新たに課された」と書きましたが、正確ではありませんでした。12月1日に施行されたのは登録訓練機関の制度(登録の開始)で、受講と修了証明書の携帯の義務がかかるのは2028年6月ごろからです。


① いつから——2028年6月ごろ #

義務がかかるのは2028年6月ごろから 2025年12月に始まったのは「訓練機関の登録」。受講と携帯の義務は経過措置のあと 2026 2027 2028 2029 2030 初回受講の推奨期間(2026年6月〜2028年5月) 改正法 公布 2025/6/6 訓練機関の登録 開始 2025/12/1 初の登録(2機関) 2026/4/30 いま 2026/9 受講・携帯の義務 2028/6ごろ ※ 義務規定は公布から3年を超えない日(2028/6/5)までに施行。国交省は前倒しの予定なし

国交省の資料では、2段階になっています。

段階時期中身
STEP12025年12月1日登録訓練機関に関する規定が施行(機関の登録が始まる)
STEP2法律の公布(2025年6月6日)から3年以内=2028年6月5日まで管制圏に係る空港等での離着陸等と練習の監督に、技能発揮訓練の修了が義務化

FAQには、こうあります。

技能発揮訓練に関する航空法第71条の5及び第71条の6の適用は、2028年6月頃を見込んでおります。

さらに、前倒しはしないと明言しています。

経過措置については、特段の事情がなければ最長となるよう施行日を定めることが一般的であるところ、現時点で来年等に前倒して施行することは予定しておりません。

いま慌てて受ける必要はありません。ただし、後で書くとおり「いつ受けるか」には損得があります。

② 自分は対象か——「管制圏」があるかどうかで決まる #

条文(航空法第71条の5第1項)を読むと、義務がかかる行為は4つだけです。

一 航空交通管制圏に係る空港等から航空機を離陸させ、又はその離陸のために航空機を地上走行させる操縦 二 前号に規定する空港等へ航空機を着陸させ、又はその着陸のために降下飛行させる操縦 三 第一号に規定する空港等を使用して行う…操縦の練習の監督 四 第一号に規定する空港等を使用して行う…計器飛行等の練習の監督

つまり「技能証明を持っているから全員」ではなく、「管制圏のある空港等で離着陸する人と、そこで練習を監督する人」です。

自分が使う空港は「管制圏」か「情報圏」か #

これがいちばん最初に確かめることです。AIPの AD 2.17(ATS AIRSPACE)に書いてあります。

  • Control Zone(管制圏) → 対象
  • Information Zone(情報圏) → 条文上は対象外

例を挙げると、福島空港は AD 2.17 で “Fukushima Information Zone”(ARPから5NM、4,000ft以下、AFIS “Fukushima Radio”)です。情報圏の空港だけで離着陸しているなら、この義務はかかりません。

ただし、一度でも管制圏の空港に降りる予定があれば対象です。ヘリの場合、患者搬送や整備・空輸で管制圏の空港に入ることは珍しくありません。「普段は使わない」ではなく「使う可能性があるか」で判断するのが安全です。

なお、管制圏の中にある場外離着陸場の扱いは、公表されている資料では明記を見つけられませんでした。該当する運航がある方は、地方航空局に確認してください。

機種・資格の区分はない #

FAQから、はっきりしている点です。

疑問答え
回転翼と固定翼の両方を持っていたら2回?不要。1枚で双方に有効
機種ごとに受ける?不要。種類・等級の区分なし
滑空機(グライダー・動力滑空機)は?対象(技能証明を持つため)
業務内容(運送・使用事業・自家用)で違う?違わない。修了証明書があれば機種の限定なく乗務可能

訓練生・練習生は? #

  • 操縦練習をしている人(ソロを含む)は不要。携帯義務は監督する人にかかります
  • 型式限定取得のための訓練生も不要。ただし機長である監督者には必要
  • ライセンス取得前でも受講できる。取得直後に管制圏で飛ぶ予定があるなら、先に取っておける

教官・監督者の立場で管制圏の空港を使う人は、確実に対象です。

航空運送事業の運航規程に従う運航は、携帯義務が免除 #

【FAQ】航空法施行規則第162条の19により、

航空運送事業者が運航規程に従って運航を行う場合は、運航規程に基づくCRM訓練が技能発揮訓練と同等以上となり、修了証明書の携帯義務が免除されます。 ただし、運航規程に従って行う運航でない場合は、登録訓練機関が行う技能発揮訓練を修了すること及び修了証明書を携帯することが義務付けられます。

ヘリの操縦士はここに注意が要ります。同じ人が、運送事業の運航と、使用事業・自家用の運航をまたいで飛ぶことがよくあるからです。運航規程に従う運航では免除でも、それ以外の運航で管制圏の空港を使えば必要になります。

→ 自分の会社の運航がどちらに当たるか、会社の運航管理部門に一度確認しておくのが確実です。

③ いつ受けるか——有効期限の仕組み #

基本は「行為の日前2年以内」 #

航空交通管制圏に係る空港等で離着陸等を行う際、当該行為を行う日前2年内に技能発揮訓練を修了していなければなりません。

国交省の例では、2028年6月6日に離着陸するなら、2026年6月6日〜2028年6月5日の間に修了している必要があります。

更新は「満了日前45日以内」が得 #

更新は「満了日前45日以内」がいちばん得 国交省FAQの例をそのまま図にしたもの(令和8年=2026年) 1回目 2026/6/1 → 2028/6/1 修了日から2年 2回目 2028/5/1 → 2030/6/1 満了31日前に受講 → 前回満了日から2年 3回目 2030/4/1 → 2032/4/1 満了61日前に受講 → 修了日から2年(2か月損) 満了日前45日の枠。この中で修了すれば満了日の月日を引き継ぐ(施行規則162条の20)

【FAQ】施行規則第162条の20により、満了日の45日前から更新可能。45日以内に更新すれば、満了日の月日は変わらず2年後の同月日まで有効になります。

逆に言えば、45日より早く受けると、修了日から2年に戻り、その分だけ有効期間が短くなります。上の図の3回目がそれで、2か月早く受けたせいで満了日が2か月前倒しになっています。

→ 満了日はカレンダーに入れておき、45日前から予約を入れる。これがいちばん損がありません。

初回をいつ受けるか #

国交省は「2026年6月〜2028年5月の間に初回受講を推奨」としています。

ここには損得があります。

  • いま(2026年9月)受けると、満了は2028年9月。義務が始まってすぐ(3か月後)に更新が来ます
  • 2028年春に受けると、義務開始後もほぼ2年使えます

一方で、義務開始の直前は受講希望が集中することも考えられます(これは私の推測です)。 私の考えとしては、2027年後半〜2028年春を目安に、早めに予約を入れるのがバランスがいいと思います。

④ どこで受けるか #

国交省の登録訓練機関一覧(令和8年8月31日時点)には、10機関が載っています。

登録番号機関実施場所
T-001エアロトヨタ株式会社東京ヘリポート内
T-002松本茂治(松本登録訓練機関)千葉県市川市
T-003株式会社アルファーアビエィション東京都港区
T-004共立航空撮影株式会社調布本社/八尾空港内
O-001朝日航空株式会社八尾空港
O-002セントラルヘリコプターサービス株式会社愛知県豊山町
O-003特定非営利活動法人 日本災害救援飛行協会福井空港ビル内
O-004小川航空株式会社大阪市此花区
O-005株式会社レジャークリエイトホールディングス宮崎市
O-006エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン株式会社神戸空港事業所

ヘリの運航会社が多いのが目につきます。一覧は随時更新されます。

受ける前に確認しておきたい点が3つあります。

  1. 外部の受講者を受け付けているか:FAQでは、訓練事務規程で「社内の者に限定」することも可能とされています。一覧に載っていても、誰でも受けられるとは限りません
  2. オンラインがあるか:オンラインでの実施は認められていて、講師1人あたり受講者20名までです
  3. 費用:受講料は各機関の設定で、国交省の公表資料には載っていません

⑤ 受けたあと——修了証明書の扱い #

特定操縦技能審査とは性格が違う点に注意が要ります。

特定操縦技能審査技能発揮訓練
記録技能証明に記載される技能証明には記載されない
証明—登録訓練機関が交付する修了証明書
携帯—管制圏の空港等での離着陸時に携帯義務(航空法71条の6)

FAQから、実務上の注意点です。

  • 紙で携帯する:修了証明書は「書面で携帯いただくもの」。大きさは航空従事者証明書と同等が望ましい。オンライン受講でメールで届いたら、印刷して技能証明と一緒に
  • 有効期間の管理は自分で:技能証明に記載されないので、満了日を自分で管理するしかありません
  • 古い証明書は機関の指示で処分:新旧2枚を持ち歩いて混乱しないように

⑥ 何を学ぶのか #

中身も確認しておきます。

  • 訓練時間は最低3時間
  • 科目は訓練実施の意義/ヒューマンファクターの概要/技能発揮訓練の概要 等
  • 過去の事例を模したロールプレイ演習(シナリオ教材)が入る
  • FTD(訓練装置)を使う前提の教材はない。標準教材は紙ベースに一部動画
  • シングルパイロットとマルチクルーで教材を分ける必要はないとされています

条文が訓練の目的として書いているのは、「管理技能」です(航空法71条の5第2項)。

航空機の操縦に従事するのに必要な知識及び能力であつて、滑走路への誤進入その他の国土交通省令で定める危険な事態の発生を防止するため航空機の操縦において必要となる複数の作業を適切に管理するためのもの

「複数の作業を管理する」——これはヘリのシングルパイロット運航そのものだと思います。管制圏の空港で、交信を聞き、読み返し、誘導路を確認し、ホールドショートで止まり、計器を見る。これを一人で回します。

3時間の座学で身につくものではありませんが、自分がどこで作業を取りこぼしやすいかを知る機会にはなるはずです。


まとめ——操縦士側のチェックリスト #

#確認することどこで見るか
1義務は2028年6月ごろから。いまは準備期間国交省 特設ページ
2自分が使う空港は管制圏か情報圏かAIP AD 2.17
3管制圏の空港に降りる可能性があるか(搬送・整備・空輸を含む)自分の運航
4教官・監督者として管制圏で練習を監督するか自分の立場
5運航規程に従う運送事業の運航か、それ以外か会社の運航管理
6初回は2026年6月〜2028年5月。私のおすすめは2027年後半〜2028年春に早めに予約登録訓練機関
7受講先が外部受講・オンラインを受けているか、費用は各機関に問い合わせ
8修了証明書は紙で技能証明と一緒に携帯—
9満了日をカレンダーに入れ、45日前から更新—

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出典 #

本記事は2026年9月29日時点の公表情報に基づきます。義務化の施行日、登録訓練機関、受講料などは今後変わる可能性があります。「初回をいつ受けるか」の提案は筆者個人の考えです。

ヒーロー画像:「Haneda Airport control tower」by Takayuki Suzuki from Kanagawa, Japan(Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.0)。本記事への掲載にあたり、切り抜きとリサイズを行いました。

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